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遺族が直面する法律問題

勤務問題

労災と損害賠償との関係

 勤務に関連した心理的負荷によって家族が自死した場合、以下の2つの手続きが存在します。

◇国に対する労災の請求
◇企業などに対する損害賠償の請求

 労災の請求と企業に対する民事損害賠償の請求は、それぞれ完全に独立した手続きですから、どちらかを先に請求することも、両方同時に請求することもできます。

  もっとも、労災によって自死が業務に起因したものだと認められると、その結果を、民事損害賠償の請求において証拠として利用できるので、一般的には、労災の請求を先行させ、労災が認められてから損害賠償請求を行います。

労災と損害賠償との関係図

労災の手続きに要する期間

  労災の手続きは、労働基準監督署長に対して行いますが、労災の認定が出ない場合、労働者災害補償保険審査官→労働保険審査会の順で不服を申し立てることができます。

  また、労働保険審査会でも労災の認定が出ない場合は、地方裁判所に対して行政訴訟を提起でき、勝訴の判決が出ない場合は高等裁判所→最高裁判所へ不服申立てをすることができます。

 最初の労働基準監督署長の段階では、おおむね1年程度、労働者災害補償保険審査官及び労働保険審査会の段階はおおむね6か月から1年程度で結論が出る場合が多いようです。

  また、行政訴訟の場合、地方裁判所での裁判がおおむね1年半から2年、高等裁判所での裁判がおおむね1年程度で結論が出る場合が多いようです。

民事訴訟に要する期間

 民事訴訟の場合、労災の認定を前提とすれば、地方裁判所での裁判がおおむね1年半から2年、高等裁判所での裁判がおおむね1年程度で結論が出る場合が多いようです。

伸長の手続きの活用を

 3か月という熟慮期間は、家族を亡くした直後の遺族にとって、非常に短い期間です。

  そこで、熟慮期間内にプラスの財産とマイナスの財産の評価に迷った場合などは、熟慮期間中に家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申し立てることで、じっくり考える時間や、弁護士に相談する時間を確保することができます。

  熟慮期間の伸長は必要があれば数回にわたって行うことができるため、その間に相続財産を調査して、マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、その時点で相続放棄を行うことができます。

早期の証拠の収集が大切

 勤務問題による心理的負荷を裏付ける証拠は、企業側にあるものが多いといえます。

 そして、企業側にある証拠は、時間の経過と共に散逸・消滅してしまったり、悪質な場合であると破棄・改ざんされてしまう場合も少なくありません。

 そこで、裁判所を通じ、企業側にある証拠を収集する証拠保全という手続きを利用することが考えられます。

 自死の原因について勤務問題を疑った場合、まず、証拠保全について十分な経験のある弁護士に相談し、早期に証拠保全を行うことがとても大切だといえます。

 また、手帳、パソコン、携帯電話などの遺品が重要な証拠となる場合がありますので、遺品は大切に保存して下さい。

 同僚などに話しを聞ける場合は、会話の内容をICレコーダーで録音したり、陳述書という形で残すようにして下さい。

期間制限に注意

 勤務問題に関連して、以下の様々な期間制限が設けられています。一旦期間を過ぎてしまうと、原則として請求が行えなくなります。

◇遺族補償給付(年金、一時金)の請求

 自死から5年

◇葬祭料の請求

 自死から2年

◇労働者災害補償保険審査官に対する審査請求

 業務外決定を知った日の翌日から60日以内

◇労働保険審査会長に対する再審査請求

 再審査請求棄却の裁決を知った日の翌日から60日以内

◇行政訴訟の提起

 再審査請求棄却の裁決を知った日の翌日から6か月以内

◇民事損害賠償の請求

 自死から3年又は10年

補償の内容

 労災が認められた場合、遺族の法的地位によって異なりますが、遺族特別支給金、遺族補償年金、遺族特別補償年金、遺族補償一時金、葬祭料、就学援助支給金などの補償を得ることができます。

 また、損害賠償請求では、自死による慰謝料、将来得ることが出来た利益、葬祭料などを請求することができます。

 加えて、後述する賃貸借問題で大家さんに支払わねばならなくなった原状回復費用、将来賃料などを会社に対して請求することも考えられます。

 労災及び損害賠償請求によって得る経済的利益は、遺族の法的地位によって異なりますが、数千万円から1億円以上になる場合もあります。