「警察から十分な説明を受けられなかった」というご相談をご遺族から受けることがあります。
そもそも、ご遺族は警察から、いつ、どのように説明を受けられるのでしょうか。「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」や令和6年3月1日付通達をもとに説明したいと思います。
※根拠となる「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」や通達については、2023年9月11日の西川翔大弁護士のコラム「遺族が警察から得られる情報について」に詳しい説明がございます。
1 どのような説明が受けられるのか
警察がご遺族に遺体を引き渡す際には、下記のような「死因その他参考となるべき事項」を説明すべきとされています。
①遺体の発見日時
②調査の実施結果
ここでの調査の内容としては、遺体の様子や発見場所の調査、関係者に対する発見時の状況の聞き取りなどが想定されています。
③解剖の実施結果
警察は、解剖前に、ご遺族に解剖の必要性を説明しなければならないとされ、また、解剖後には結果を説明すべきとされます。
なお、場合によっては、ご遺族の承諾がなくても解剖を実施することができてしまいます(警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律6条2項)。
④死因
死因とは、犯罪によって亡くなったわけではないと判断した理由とその経緯のことをいいます。
⑤その他参考事項
2 説明の時期
原則として、遺体の引渡し時です。ご遺族の都合によって引渡し時に説明することが難しい場合には、ご遺族の都合がつき次第すみやかに説明することとされています。
とはいうものの、遺体の引渡し時には、ご遺族の動揺も大きく、説明を十分に理解することは難しいでしょう。そのため、通達では、遺体の引き渡しから時間が経過してから改めて説明を受けたいと感じるご遺族にも適切に対応できるよう、担当者の連絡先を伝えておくように記載されています。
また、ご遺族から検査結果の提供を求めた場合には、検査結果を簡潔にとりまとめた書面を交付し、再説明を行うこととされています。
3 説明方法
原則として口頭となりますが、ご遺族の不安や疑問をできる限り解消することができるように資料を提示するなど、適切な説明に努めることとされています。
また、2のとおり、警察に要望をすると、書面を交付してもらうことができます。
警察から連絡があると、突然のことで、ご遺族が動揺されてしまうのは当然のことです。警察もご遺族の心情に配慮すべきとされていますので、落ち着いてから、あらためて警察に説明を求めることも可能なのです。