近年、インターネットやSNSの普及に伴い、SNSの未成年者に対する悪影響やネットいじめ等が深刻な社会問題となっています。その影響で自ら命を絶つ若者も増えており、この問題に対する対策と支援の必要性が高まっています。
1 ネットいじめに関する統計データ
文部科学省が2024年10月31日に公表した2023年度の調査によれば、全国の小・中・高校などにおけるいじめの認知件数は73万2568件と過去最多を更新し、前年度比で7.4%増加しました。いじめが原因で自殺に至る「重大事態」の認知件数も、過去最多の1,306件となりました。
特に、ネット上のいじめに関しては、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」という回答が全体で2万4678件(同758件増)に上り、年々増加しています。また、ネット上という見えづらさから、いじめの解消についても確認しにくい事案が多いことが指摘されています。
2 海外に目を向けると
昨年末、オーストラリアが世界に先駆ける形で、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決したことが話題となりました。SNSの過度の使用が心身の健康に与える影響から子どもを保護することが目的で、保護者の同意があっても利用は認められません。国家レベルでSNSの利用に規制をかける初めての事例であり、大手IT企業を対象とした最も厳しい規制の1つといえます。
その立法背景には、未成年者が、SNSでダイエットに関する情報を収集するようになった結果、摂食障害の末に14歳で自らの命を絶つという事件があったほか、SNSを介して悪質ないじめにあったり、性被害にあったりする事態が相次いだことにあるようです。保護者を中心に規制を求める声が強くなり、オーストラリアの世論調査の結果では、国民のおよそ77%がこの法案に賛成したということです。
その他、イギリスでも、ネットいじめを含むオンライン上の有害行為に対処するため、プラットフォームの責任を強化するための法律が成立しており、SNSの悪影響から未成年者を保護しようとする世界的な動きは、非常に大きくなりつつあるといえます。
3 日本の現状と課題
日本では、プロレスラーの木村花さんの自殺を契機に、オンラインでの中傷を厳しく取り締まるため、刑法における侮辱罪の厳罰化や、プロバイダ責任制限法の法改正などが行われてきました。ただし、日本の法的対策は、特に未成年者に対するSNSの悪影響を重視しこれを防止しようという観点においては不十分と言わざるを得ません。
このような昨今の世界の状況・法的対策と日本との違いを知ることで、日本においても、社会全体として法的対策の強化やプラットフォームとの連携を進めることで、若い世代を守る実効的な仕組みづくりが急務であること、それと同時に、加害者にも被害者にもならないため、ネットリテラシーに関する教育も非常に重要になってくることを深く感じるに至り、今回の記事とさせていただきました。