SNSと自殺

1  自死遺族支援弁護団に相談される御遺族の中には、故人が自らSNS上で自殺志願者を募り、あるいはSNS上で知り合った相手と共に自殺を遂げるケースや、自らは自殺意図を有しない第三者がSNS上で自殺志願者を募り、自殺方法や自殺場所に関する情報提供を行ったり、それぞれに役割(例えば、必要な道具等の購入役、共に自殺する予定の仲間を各地からピックアップして、自殺場所まで移動するための運転役など)を与えて、自殺を遂げさせるケースによって自死遺族となった方々がおられます。しかも、そういった相談は増加傾向にあるように感じます。

2 自殺意思を有する者に対し、自殺方法や自殺場所についての情報提供を行ったり、道具を提供するなどの関与を行い、自殺を遂げやすくさせる行為は、法律上は自殺幇助罪(刑法202条)という犯罪行為に当たる可能性があります。もっとも、SNS上の「死にたい」という表現(裏側にある真意)には幅があり、自殺意図を表明したものから援助希求として、あるいは「辛い」という意味で使われる場合もあることから、仮に、援助希求として、あるいは「辛い」という意味で「死にたい」と書き込んだ者に対して自殺を誘引した場合は、自殺教唆罪(刑法202条)という犯罪行為に当たる可能性があります。

 最近では、福島、山形両県で交流サイト(SNS)を通じて知り合った10~20代の5人の自殺を手伝ったなどとして、自殺ほう助や未成年者誘拐などの罪に問われた福島市の無職男性(37)に対し、2026年3月6日、懲役5年(求刑懲役6年)の判決が言い渡されたという報道が記憶に新しいと思います。

3  自殺に関与したり、自殺の誘引・勧誘を行う情報については、X(旧Twitter)等のSNS運営会社や通信会社なども自主的に発見・削除対応等を行っているようではありますが、警察庁でも、インターネット上の違法情報や有害情報に対しては、IHC(インターネット・ホットラインセンター)を窓口として、サイト管理者等に対して削除依頼を行うなどの対策を行っています。令和8年3月12日付けで公表された「令和7年におけるインターネット・ホットラインセンターの運用状況について」によれば、違法情報を含む通報受理総数は63万2804件であり、そのうち通報ホットライン運用ガイドラインに基づいて分析した結果、自殺誘引等情報に当たると判断された通報は5321件(うち自殺関与は39件、自殺の誘引・勧誘は5282件)にのぼったそうです。

 上記通報に対し、削除依頼前に削除された129件を除く5192件に対してIHCから削除依頼を行ったところ、令和8年1月末の時点で、4241件について削除が完了しているとのことですが、依然として1000件近くが野放しの状態にあるのが現状です。

4  令和7年の人口動態統計(概要)によれば、出生率は平成28年以降低下し続けており、他方で、年齢別死因においては、10歳から44歳において自殺による死亡が最も高くなっています。

 上記年齢層は、SNSへの親和性が比較的高い層ですので、分析を進めていけば、SNS上の有害情報が自殺に寄与しているケースは相当数に上る可能性があります。

5 人が自死に至る過程は複雑ですので、その原因を分析し、対策を講じることは容易なことではありません。ただ、自殺意図を有している人も、「死にたい」気持ちと「生きたい」気持ちとの間で常に揺れ動いていると聞いたことがあります。そうだとすれば、「死にたい」という気持ちをSNS上で表明する人がいた場合に、生と死の間で揺れ動く気持ちを死の方向に動かすのではなく、生の方向に動かすように働きかけるきっかけとしてSNSが機能する社会であって欲しいと願わずにはいられません。