差押・仮差押の手続

 労災等で亡くなられた方のご遺族が、会社に対して損害賠償請求の裁判を起こし、裁判所が判決で損害賠償請求権を認めた場合であっても、会社が、判決で認められた金額を支払わないことがあります。とても悪質で、会社が、例えば土地・建物や銀行の預金口座等の財産があるにもかかわらず支払わない場合、会社の土地・建物の所在や銀行の預金口座を知っていれば、裁判所を通して「差押」という手続きをして、強制的に回収することができます。しかし、もし会社が財産はないと主張し、実際に会社の財産を発見することもできなかった場合は、判決で損害賠償請求権が認められたとしても、残念ながら回収をすることはできません。

 会社に対して裁判を起こした後、判決が出るまでの間は、時間が数年単位でかかることも少なくありません。中には、損害賠償を支払いたくない会社が、裁判所が判決を出すまでの間に、会社の財産を隠してしまうこともあります。そのような場合に備えて、有効な方法が「仮差押」という手続です。判決が出るまでの間に財産を隠してしまわないよう、裁判所を通して仮に会社の財産を差し押さえておく手続です。会社の財産を仮に差し押さえておくと、仮差押後、会社が土地・建物を第三者に売却をしたとしても、将来勝訴判決を得たら、仮差押をした部分から強制的に回収することができますし、銀行の預金口座は仮差押えが入った金額は払い戻しをすることができなくなります。この「仮差押」手続きは、裁判所に対して、「仮」に差し押さえる必要性を説明する必要がありますし、判決が出た後に行う場合と異なり、「仮」の手続のため、相当額の担保金を裁判所に納める必要があります。

 会社に対して起こした裁判の中で、会社への請求自体は認められる方向で進んでいたとしても、会社が、経営状態の悪さを理由に、高額な金額は支払えないと言い、低い金額での和解を提案することがあります。このような場合は、事前に仮差押を入れておくと、仮差押が入った部分の財産は少なくとも会社にあることが分かるため、和解する場合の金額を上げる手段としても有効です。

 このような手続も活用して、しっかり会社から支払いを受けるよう、工夫をしています。

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