線路への飛び込みで亡くなられた方の親より、鉄道会社から請求されるかどうか不明の状態で相談をされ、鉄道会社からの損害賠償債務等の故人のマイナスの財産等を調査し、結果的に相続をした事例

法的手続の内容

 線路への飛び込みで亡くなられた方の親であるご遺族より、鉄道会社がご遺族の連絡先を知らないため、鉄道会社から請求されるかどうか不明の状態で、相談をされました。

故人の親であるご遺族は、故人の遺産の法定相続人でした。

 そのため、ご遺族は、故人が残されたプラスの財産(預金、現金等)とマイナスの財産(貸金債務、損害賠償債務等)をそのまま相続するか、いずれも相続しないか等、発生した相続の対応を検討する必要がありました。

 発生した相続の対応は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。ご遺族と相談し、発生した相続の対応を検討する期間を延ばす手続きを行い、その期間内にプラスの財産とマイナスの財産を調査した上で、相続の対応を決めることにしました。

 考えられる大きなマイナスの財産は、鉄道会社からの損害賠償債務と、日本学生支援機構の奨学金でした。

 鉄道会社からの損害賠償債務については、当職から鉄道会社に対して問合せたところ、鉄道会社は、約15万円の金額を提示しました。鉄道事故が深夜の時間帯に発生したことや、鉄道の損傷もなかったことから、振替輸送費や鉄道の修理費用等を請求されず、約15万円の金額になったようです。

 日本学生支援機構の奨学金については、ご遺族が仮に相続しても、返還免除の手続きを利用できることを確認しました。

 その他に、大きなマイナスの財産はありませんでした。

 ご遺族は、プラスの財産も確認し、結果として、相続をして、日本学生支援機構の奨学金については返還免除の手続きを行い、鉄道会社に対する損害賠償債務等のマイナスの財産については支払いをしました。

法的手続を終えて

ご遺族は、鉄道会社に対して、可能な限り、支払いをしたいと考えていました。
また、ご遺族が相続放棄をした場合、故人の祖父母、つまり、ご遺族の親が、次の法定相続人に当たりました。ご遺族の親は、故人が亡くなったことを知りませんでした。ご遺族が相続放棄をしたら、債権者からの請求等で、ご遺族の親が、故人が亡くなったことを知る可能性がありました。ご遺族は、親の体調等を考え、親に伝える時期等を十分に検討したいと考えていました。
ご遺族のご意向に沿う法的な解決ができたと思います。また、当弁護団にご相談いただいたことに、お礼申し上げます。

自死遺族が直面する
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