本件は過労による脳内出血と過労自殺が重なった事案でした。労災となるためにはまず過労死の要件を満たす必要がありましたので、証拠保全を実施して職場にあるタイムカードやパソコンのログを入手しました。もっとも、故人は総務部長として社外での接待やセミナーなどに参加していました。そこで、2回目の証拠保全を実施して、経費関係の領収書などを入手し、社外でどのような仕事をしていたのか明らかにしました。
労災は、脳内出血の業務起因性を肯定した上で、退職勧奨の心理的負荷も考慮して、自死が労災であると認定しました。
民事訴訟は会社だけではなく取締役も被告としました。民事訴訟の中でもまず労働時間が主な争点となりました。社外での活動だけではなく、この会社では朝の掃除の時間があったため掃除の時間が労働時間に該当するかも争点となりました。判決では、掃除の時間の一部、社外活動のうち選挙応援の時間やセミナーの時間を労働時間と認定し、業務と脳内出血との相当因果関係を肯定した上で、降格や退職勧奨の心理的負荷も考慮して、自死との相当因果関係も肯定し、会社と取締役に対する責任を肯定しました。
また、ご自宅で亡くなったため、ご自宅を取り壊して更地にした上で、買主に告知した上で売却しました。