児童の自死について、第三者調査委員会において数々のいじめが認定され、当該児童の死亡はいじめによるものであったことが認められたため、独立行政法人日本スポーツ振興センターの死亡見舞金の支給がなされ、その後、当該児童の両親が学校の設置者を被告として損害賠償請求訴訟を提起し、和解解決に至った事例

法的手続の内容

 児童は同級生からいじめられていたことから、学校が実施した「いじめアンケート」に自身のいじめ被害を訴えたにもかかわらず、学校は対応を行わず、その後、当該児童は自死しました。そこで、両親は学校に対していじめの実態調査を依頼し、いじめ実態調査のための第三者委員会が設置されました。ところが第三者委員会の結論が出ていない時点で、教育長が第三者委員会と協議することなく記者会見を開いて「第三者委員会はいじめを認定していない」と繰り返したことから、信頼関係が損なわれたとして第三者委員会は解散し、新たに第三者委員会が設立され、いじめ調査をすることとなりました。当職らは新しい第三者委員会の調査中に両親から相談を受け、第三者委員会への働きかけ方についてアドバイスをしました。調査を終えた第三者委員会は調査報告書において、数々のいじめを認定して、当該児童の死亡はいじめによるものであったことを認めました。いじめと当該児童の死亡との因果関係が認められたことから、独立行政法人日本スポーツ振興センターから死亡見舞金が支払われました。


 また新しい第三者委員会の調査報告書公表までの間、虐待していたという誹謗中傷に両親は苦しめられましたが、調査報告書は、虐待は認められないとし、更に、誹謗中傷に関与した関係者は反省すべきと指摘しました。

 新第三者委員会の調査終了後、両親は、当職らに委任して、学校の設置者である地方自治体を被告として当該児童がいじめにより自死したことについて訴訟を提起したところ、自殺防止義務違反については敗訴しましたが、調査中に記者会見を開いて「第三者委員会はいじめを認定していない」と繰り返した教育長の責任は認められ一部勝訴しました。その後の控訴審では、高等裁判所からの和解勧告を受けて、①地方自治体から解決金の支払いと、②児童がいじめアンケートを通じて求めていた対応を学校が行わなかったことに対する謝罪と、③本件のような痛ましく悲惨な事態が再び繰り返されないよう、いじめ防止対策の更なる強化に向けた取組を推進する旨の約束を得ることで、和解解決するに至りました。

法的手続を終えて

裁判は、一審、二審を合わせて5年半程も続き、両親にとって、長く苦しい戦いでしたが、裁判を進める中で、裁判所の送付嘱託という手続きを利用して、調査報告書には具体的に記載されていなかった第三者委員会の調査結果の詳細を知ることができ、また、関係者らに対する証人尋問でそれまで知らなかった事実を知ることができました。
両親からは、裁判をやってよかったという感想と、今後も自死遺族の気持ちに寄り添った活動を続けてほしいというお言葉をいただけたので、裁判をした意義は大きいと思います。

自死遺族が直面する
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