マスコミに大きく報道された品質偽装問題をきっかけに設置された品質管理を行う部署に配置転換となった故人が、再び品質偽装問題が発覚したため各工場の情報を収集して対応するなどの業務に従事した結果、うつ病を発病して自死に至った事案において、労災の認定を受け、会社に対する損害賠償請求も訴訟に至ることなく和解で解決した事例

法的手続の内容

 故人は、1回目の生じた品質偽装問題の対応には関わっていなかったものの、この品質偽装問題をきっかけに設置された品質管理を行う部署の異動し、その後に再び品質偽装問題が生じました。弁護団としては、この配置転換と、異動後に再び生じた品質偽装問題に対応することの心理的負荷は、1回目の品質偽装問題が大きく報道されていたことを踏まえると、非常に強いものだと考えていました。

 また、故人はコロナ禍のためリモートワークを中心として働いていました。会社から提供を受けたログを解析したところ、パソコンの使用開始時間と終了時間だけ特定できたため、パソコンの使用開始時間を始業時間、終了時間を終業時間と評価して労働時間計算を行い、月100時間を超える時間外労働に従事していたと主張しました。

 労基署は、配置転換の心理的負荷を「中」、2回目の品質偽装問題に対応したことによる心理的負荷を「中」、総合評価を「強」と認定して労災を認めました。もっとも、リモートワークの労働時間は、故人が自己申告した時間だけを考慮し、パソコンの使用開始時間と終了時間を考慮しませんでした。  会社に対する損害賠償請求は、ご遺族の意向に沿って任意の交渉から始めました。そして、交渉の結果、訴訟に至ることなく和解で終了することができました。

法的手続を終えて

品質偽装問題の深刻さを考えるとそれだけ労災になるべき事案であったと思いますが、弁護団としては、リモートワークにおける長時間労働も無視できないと考えていました。
しかし、労基署は、近年、リモートワークや持ち帰り残業について非常に厳しい認定を行っています。これは、令和3年3月30日に「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」(基発補0330第1号)という通達が出され、この通達が持ち帰り残業にについて「自宅等に仕事を持ち帰って行うことを使用者に義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたことが確認された場合であって、かつ、客観的な資料により持ち帰り残業の成果が特定できるようなときには、労働時間に該当すると考えられる」としていることが原因となっています。
本件は持ち帰り残業ではなくテレワークの事案でしたが、労基署は、自己申告を超えた時間について持ち帰り残業と同じように考え、客観的な資料によって成果物が特定できないと認定し、労働時間性を認めなかったのだと思われます。
弁護団としては、上記通達自体が持ち帰り残業の認定を非常に厳しくし過ぎていると考えますが、その一方で、いかにして持ち帰り残業の労働時間性を認定させるか、法的主張や証拠収集の面で研究が必要だと感じています。

自死遺族が直面する
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