賃貸物件において、賃借人が練炭自死したことによって建物が一部焼損したことにより、賃貸人から賃借人の相続人である遺族及び連帯保証人に対し、修繕費及び建物価値下落分の損害を賠償するよう求められた事件について、示談交渉では合意に至らず、訴訟上の和解で解決した事例

法的手続の内容

 賃貸物件の中で練炭自死したということで、賃貸人から、一部焼損したところの修繕費と、建物の価値下落分の損害を賠償するよう求められた事件でした。

 そして、残念ながら、賃貸人の代理人弁護士との示談交渉では合意に至らず、賃貸人から損害賠償請求訴訟を提起されました。

 賃貸物件における修繕費については、練炭自死したことと相当因果関係にある破損や汚損等に係る修繕費に限定され、「建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)」及び「賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)」は修繕の対象に含まれません。

 というのも、「賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。」(最判平17年12月16日集民218号1239頁)ため、賃借人は、通常損耗又は経年劣化について原状回復義務を負わないことになっているからです。

 また、国土交通省は、原状回復にかかるトラブルの未然防止と迅速な解決を目的として、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(以下「ガイドライン」という。)を策定し、ガイドラインにおける原状回復費用の算定方法を理解する上での参考情報としてとりまとめたものを、ガイドラインの参考資料として公表しており、経過年数を考慮した原状回復費用の算定方法についても、具体例を挙げて紹介しています。

 こうした反論をした結果、裁判所も遺族側の反論を取り入れ、裁判所が和解案を双方に提示しました。その和解案の内容は、相続人であるご遺族の方や連帯保証人の方も納得のいく内容でしたので、遺族側も承諾し、賃貸人側も承諾したため、無事に裁判所で和解が成立しました。

法的手続を終えて

賃貸物件で亡くなった場合、高額な損害賠償請求をされるとよく相談を受けます。
裁判所では、その損害が自死とどう関連するのか、当面の間新しく賃借人に貸すことができなかったことに対する損害はどのくらいが妥当なのか、また経年劣化部分としてどのくらい控除するのが妥当なのかなどについて、双方の主張を聞き、審理されることになります。
裁判所における主張立証の見通しを踏まえ、示談交渉の場面においても遺族側が負担すべき損害の範囲について、不当な損害費目が無いか等、丁寧に検討することが必要であると思います。

自死遺族が直面する
様々な法律問題について、
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