長時間労働や職場の過重なストレスによってメンタルヘルスを害し、自死に至ったにもかかわらず、「労働者ではないから労災ではない」「過労死や過労自死には当たらない」と使用者から説明されたり、労災手続の段階でそのような判断が問題となったりするケースがあります。
近年では、ウーバーイーツなどのプラットフォームワーカーをはじめとする新しい働き方において、労働者性が争われる場面も増えています。
一方で、残業代の支払いや労働法に基づく労務管理を免れることを目的として、一般的な労働者としての働き方をしている人を「労働者ではない」と扱う、古典的で乱暴な手法も依然として見られます。
その名目はさまざまです。請負、委任、外注、業務委託、フリーランスとの契約形式にしたり、役員・経営者や、研修生、弟子、有償ボランティアなどとされたりすることがあります。
しかし、「労働者」に当たるかどうかは、契約書の文言や呼ばれ方によって決まるものではありません。実際の働き方に基づいて判断されます。
具体的には、使用者の指揮命令の下で働いているか、労務の対価として賃金(名称が「報酬」であっても「賃金」であっても変わりません)が支払われているかなどの事情を総合的に見て判断されます。
例えば、
- 上司や会社の指示に従わなければならず、実質的に断ることができない
- 勤務時間が自由に決められなかったり、遅刻や欠勤にペナルティがある
- 成果報酬ではなく、働いた時間・日数単位や月の固定報酬で支払われている
- 社員と共に、同じ業務を行っている
などの事情が含まれていれば、契約の形式や呼称にかかわらず労働者と認められる可能性があります。
このように、本来は労働者となる働かせ方をしながら、残業代などの支払義務を免れるために非労働者扱いをしている職場では、健康被害を顧みない長時間・過重労働が強いられることも少なくありません。
そのような働き方の結果、労災事故に遭った場合はもちろん、長時間労働や過重な心理的負荷によって精神障害を発症したり、自死に至ったりした場合でも、労働者性が認められれば労災補償の対象となる可能性があります。使用者が労災保険の加入手続を怠っていたとしても、事後の手続きで労災受給は可能です。
家族が、会社や上司に逆らえない状況で長時間働いて、心身の健康を損ねたという事情がある場合には、「労働者ではないから労災にならない」「過労死・過労自死には当たらない」と説明されても、その説明をうのみにする必要はありません。契約の形式だけではなく、実際の働き方を踏まえ、実態として労働者にあたるのではないか、専門家と相談・検討することをお勧めします。