「私は、これからもこの電車に乗っていいんでしょうか?」

鉄道自死された方のご遺族が、鉄道会社からの損害賠償請求についての法律相談の際、最後におっしゃった言葉です。

鉄道自死のあった路線は、そのご遺族が毎朝、通勤に使っている電車でした。

ご遺族は自分の家族が鉄道会社に迷惑をおかけしたにもかかわらず、これからも自分はこの電車に乗り続けてもいいのか?と心配になったそうです。

「もちろん乗っても構いません。誰にも文句など言われません」とお答えすると、安心されていました。

ご遺族は、法律問題のみならず、さまざまな複雑なお悩みを抱えているのだなと、改めて痛感した言葉でした。

私達はこれからもご遺族に寄り添い、あらゆる面で、少しでもご遺族のご負担を軽くできるよう、地道に活動を続けたいと思います。 これから法律相談をされる方も、法律に関する内容に関わらず、お気軽に、なんでも弁護士に聞いて、お悩みを少しでも解消していただければと思います。

鉄道事故

 鉄道事故については、当弁護団HP自死遺族が直面する法律問題「鉄道事故」で解説していますが、警察から、故人が鉄道に飛び込んで亡くなったという連絡を受けたご遺族は大変なショックを受けます。

 親族が亡くなっただけでも辛いのに、警察から「鉄道会社に遺族の連絡先を伝えていいですか」とか問い合わせがあり、案件によっては「本人確認のためDNA鑑定をおこなう必要があり、時間がかかる」と言われ、通夜や葬儀がいつできるかわからないという場合もあります。

 故人が1人暮らしをされていたような場合、故人の遺産、預金、借金があるかもよくわからず、また、鉄道会社がいくら損害賠償を請求するかわからないということで、相続したらよいのか、相続放棄したらよいのか決められません。

 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要がありますが、鉄道会社が3か月以内に賠償請求額を明らかにしてくれるかどうかもわかりません。そのため、まずは故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをして、鉄道会社から請求が来るまで待つことをお勧めします。伸長の申立書は、家庭裁判所のホームページに書式や記載例、必要書類などの手続きが掲載されていますし、また、最寄りの家庭裁判所の手続き案内窓口に直接相談されるのも良いと思います。

 鉄道会社から損害賠償の請求が来た場合、弁護団にご相談いただければ、詳しい事情をお聞きした上で、妥当な範囲の請求かどうか弁護団で検討させていただきます。メールや電話での相談は無料ですのでご安心ください。

 最終的に相続放棄する場合、誰が法定相続人となるかについて確認しておかれると良いです。

 法定相続人になる人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族です。血族相続人には相続順位が定められており、相続順位は下記のように定められています。

第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
第2順位:親、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)

 故人に配偶者や子どもがいない場合、両親が法定相続人となり、両親が相続放棄をすると、両祖父母(ご存命の場合)が次の相続人となりますので、両祖父母も相続放棄が必要となります。両祖父母が相続放棄をすると、故人の兄弟姉妹や代襲相続人が次の相続人となりますので、それらの方も相続放棄が必要となります。

 最後に、告知です。

 この弁護団では、毎年3月に24時間相談会を、9月に12時間相談会を実施しています。

 2022年9月10日(土)昼12時から深夜0時までの12時間、自死遺族の方を対象に無料法律電話&LINE相談会を実施予定です。何かお困りごとがあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。

2022年9月10日(土)12時間無料法相談会についての詳細はこちら

なるべく早めのご相談を

弁護士の岡村です。

相談を担当していて、しばしば思うのが「もうすこし早く相談してくれていれば」というケースです。

自死に絡む相談では「相続放棄」の手続きや、相続放棄をするか否かを決められない場合の「熟慮期間の伸張」の手続きをするか否かを決めなければならないケースが多々あり、民法上その期間は、“自己のために相続があったことを知ったときから3か月以内”と短期間です(民法第915条1項)。

ご遺族は、すべきことや考えることがたくさんあり、心労も重なって、「法律相談は落ち着いたら考えよう」と思っている内にあっという間に3か月が経過してしまいます。そもそも、法律上の問題点に気がついていない場合もあります。

例えば、亡くなられた方が消費者金融などに債務を有している場合、取立てがきついからといってご遺族が「とりあえず」支払ってしまうこともあります(その支払いが「単純承認」に該当してしまうと「相続放棄」はできません。)。

また、賃貸物件内での自死の場合には大家さんから、鉄道自死の場合には鉄道会社から、しばらく請求が来ないため「もう済んだ話なのだ」「請求はないのだ」とご遺族が考えて放っておいたら、上記の3か月経過後に、大家さんや鉄道会社から突如として請求が始まるというケースもあります。

ただし、相続放棄が一見して困難であるように見えるケースでも、丁寧に事情を伺うと実はまだ相続放棄が可能な場合もありますし、相続放棄が難しいとしても、少しでもご遺族のご負担が軽くなるように当弁護団は理論や知識を絶えずアップデートしているところです。

当弁護団は、「考えがまとまらない」「何が問題か分からない」という場合の「交通整理係」という側面もあると考えています。このような場合であってもどうぞお気になさらずに、なるべく早めにご相談頂ければと思います。

>>相続についてはこちら

>>多重債務についてはこちら

>>賃貸のトラブルについてはこちら

>>鉄道事故についてはこちら