営業職の夫が会社での過重労働により自死したご遺族から依頼を受けて、労災保険の業務起因性の根拠となる資料を集める等して労災保険の申請をして労災保険支給決定を勝ち取った後、会社に対し安全配慮義務違反による損害賠償請求の示談交渉をして数千万円の解決金の支払いを受け、また、労基署が、「事業場外みなし労働時間制」が採用されると判断し、時間外労働時間を考慮せずに給付基礎日額を算定している点を争って、再審査請求にて、労災給付金の給付基礎日額を大幅に増額させた事例

法的手続の内容

 ご遺族から「労災申請をしようとしたら、会社が事業主証明をくれなくて困っている。」というご相談があり、その後、労災申請手続の依頼を受けました。

 長時間労働に加えて、異動と昇進があり、異動後にパワーハラスメントがあったという事案でしたが、長時間労働やパワーハラスメントの立証が難しく、丁寧に業務起因性を裏付ける必要があったため、私たち弁護士は夫の携帯電話のメールを1年分程精査して、夫が会社からの指示に苦しんでいる様子がわかるメールを発見しました。また、重症うつ病エピソードを発症されていることは明らかでしたが、労基署にその時期を誤って早めに捉えられると労災の支給決定を得るのが難しくなるため、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の議事録を詳細に引用しながら発病時期についての意見書を作成し、夫の携帯電話のメールとともに労基署に提出したところ、労災保険の支給決定がなされました。

 その後、会社と交渉して数千万円の解決金の支払いを受けました。

 また、労災保険の支給決定にあたって、労基署は、事業場外みなし労働時間制が採用されているとして、夫の時間外労働時間分の賃金を含めずに給付基礎日額を低く算定していたので、給付基礎日額決定に対する審査請求をしました。審査請求にあたっては、労災保険の支給決定にあたって労基署が会社から提出を受けた資料等を個人情報開示により入手して、その資料に基づき、事業場外みなし労働時間制の採用は認められないこと、みなし労働時間を超えて労働している時間帯があり、支払われるべき割増賃金が支払われていないことを主張しましたが、審査請求は認められませんでした。

 再審査請求でも、事業場外みなし労働時間制が採用されている点は覆らなかったのですが、みなし労働時間を超えて時間外労働している時間分の賃金が算定されていないという私たちの主張が認められ、給付基礎日額を計算し直しなさいという決定が出て、ご遺族が受ける遺族年金の額が大幅に増えました。

法的手続を終えて

当初ご遺族から事案の内容をお聞きした時は、長時間労働やパワーハラスメントについての明確な証拠がなく、労災保険の支給決定を得られるのは非常に難しそうな事案だと思いましたが、携帯電話のメールを丁寧に読み込んで、うつ病の発病時期について詳細に意見を述べることにより、労災保険の支給決定が得られました。
労災保険が支払われたことから、会社との交渉はスムーズに進み、裁判にならずに早期に解決できたこと、給付基礎日額を再審査請求で是正できたことはよかったです。

自死遺族が直面する
様々な法律問題について、
下記でさらに詳しい解説をしています。