労災認定基準・公務災害認定基準と民事上の損害賠償請求の関係について

1  はじめに

 労働者や常勤の地方公務員が長時間労働やパワーハラスメントなどによって過労自殺(自死)した場合、ご遺族が行える法的手続は、行政手続である労災請求・公務災害認定請求と、民事手続である損害賠償請求に分けることができます。

 労災請求・公務災害認定請求と損害賠償請求はそれぞれ別個独立した手続きですが、いずれも「業務・公務によって精神障害を発病して自殺(自死)が生じた」という法的なつながり(因果関係)を要件とする点では共通しています。

 もっとも、労災請求・公務災害認定請求の因果関係と、損害賠償請求の因果関係は、同じような事実の流れを見ているようであっても、「直ちに同視することには、問題がある」(※1)とされてきました。

 では、労災請求・公務災害認定請求の因果関係と、損害賠償請求の因果関係は、一体どのような関係にたつのでしょうか?

 静岡県警事件最高裁判決とその補足意見(最高裁令和7年3月7日判決・民集79巻3号1159頁)は、この議論に一定の解決を示したとされています。

 今回はこの最高裁判決を取り上げ、労災請求や公務災害認定請求の因果関係が、損害賠償請求の因果関係に与える影響について解説します。

2  なぜ「直ちに同視することには、問題がある」?

 ではなぜ労災請求・公務災害認定請求の因果関係と、損害賠償請求の因果関係を「直ちに同視することには、問題」があるのでしょうか?

 その理由はそれぞれの請求の目的が異なる点にあります。

 労災請求・公務災害認定請求は、使用者や地方自治体の落ち度(安全配慮義務違反)を要件とせずに、長時間労働やパワーハラスメントによる心理的負荷(職場に内在された危険)が現実化してうつ病や自殺(自死)が生じたならば、速やかに補償を行うという点に目的があります。仮に、使用者や地方自治体の落ち度(安全配慮義務違反)が要件になっていると、使用者や地方自治体が落ち度を否定することで紛争が長期化し、補償がなかなか行われないことになって、速やかに補償を行うという制度の目的が達成できなくなります。

 これに対して、損害賠償請求は、過労自殺(自死)という損害が発生した場合に、使用者や地方自治体に対して損害を負わせるのが公平なのか、それとも負わせないことが公平なのかという、損害の公平な分担が制度の目的になります。損害賠償請求は、使用者や地方自治体に損害を負わせることが前提となりますので、使用者や地方自治体の落ち度(安全配慮義務違反)が要件となります。

 このように、労災請求・公務災害認定請求は業務・公務に内在した危険が現実化した場合に補償することを目的とし、損害賠償請求は損害を公平に分担させることが制度の目的となっていますので、背景にある考え方が異なるのです。

 とはいえ、それぞれ「業務・公務によって精神障害を発病して自殺(自死)が生じた」という法的なつながりを問題とする以上、労災請求・公務災害認定請求の因果関係と損害賠償請求の因果関係がどのような関係に立つのか、訴訟の実務では問題とされてきたのです。

3  労災認定基準と公務災害認定基準における因果関係

 労災請求・公務災害認定請求における因果関係は、前記2のとおり、職場にあった危険が現実化したかという観点から判断されます。長時間労働やパワーハラスメントなどによる心理的負荷は職場における危険と評価されます。この危険が現実化することによって精神障害を発病して自殺した場合、「業務・公務によって精神障害を発病して自殺(自死)が生じた」という因果関係が認められることになるのです。

 そして、労災請求・公務災害認定請求における因果関係の認定基準は、前者では「心理的負荷による精神障害の認定基準」(基発0901第2号令和5年9月1日)(以下「労災認定基準」といいます。)が、後者では「精神疾患等の公務災害の認定について」(令和6年3月22日地基補第132号)(以下「公務災害認定基準」といいます。)が用いられています。

 労災認定基準と公務災害認定基準は、精神医学や心理学などの考え方をベースにしています。

 まず精神障害の発病は、その人が受けたストレスの強さと、その人個人が持つ精神的な弱さとの相関関係で決まるとされています。例えば、非常に強いストレスを受けた場合は、精神的な弱さが殆どない人でも精神障害を発病することがあります(例えばPTSDなど)。これに対して、精神的な弱さが非常に大きい人は、少しのストレスでも精神障害を発病することがあるのです。

 また、ストレスは人によって受け取り方が異なります。そこで、心理学の分野では、たくさんの人に対してアンケートをとり、職場での出来事(長時間労働やパワーハラスメントなど)のストレスの強さに点数をつけてもらうことで、ストレスの強さを客観化する研究が行われてきました。例えば、パワーハラスメントは多くの人がストレスを感じるので点数が高く、職場のOA化は少なくとも若い人達は働き始める前から日常的に使用していたのでストレスの点数が低くなります。そして、このような研究を踏まえて、これらの認定基準では、職場の出来事毎に、「この出来事についてこれくらいの事情があれば、精神障害を発病するくらいのストレス強度があるだろう。」という具体例を表にまとめています。

 実際の認定実務では、労働基準監督署や地方公務員災害補償基金が職場の働き方などについて調査を行い、その調査結果を労災認定基準と公務災害認定基準に当てはめて、「業務・公務によって精神障害を発病して自殺(自死)が生じた」という因果関係の有無を判断することになります。

4 労災認定基準と公務災害認定基準は静岡県警事件最高裁判決でどのように使われたか?

 静岡県警事件は、静岡県警で警部補の地位にあったAさんの妻子が静岡県に対して損害賠償を請求した訴訟(以下「妻子訴訟」といいます。)と、Aさんの父母が静岡県に対して損害賠償を請求した訴訟(以下「父母訴訟」といいます。)の二つの訴訟で争われました。

 そして、第一審(広島地裁福山支部)は、上記の事実を総合して、いずれの訴訟についても静岡県の責任を認めました。

 しかし、控訴審(広島高裁)は、妻子訴訟では第一審の判断を維持して静岡県の責任を肯定したものの、父母訴訟では静岡県の責任を否定しました。

 妻子訴訟では静岡県が、父母訴訟では父母が最高裁に対して上告・上告受理申立をしたのです。

 静岡県警事件最高裁判決は、判決の本文では明示していませんが、補足意見で重要なことを指摘しています。補足意見は、判決本文で示された結論に至る考え方の過程を明らかにしているので重要なのです。少し長いですが、引用します。

 「地方公務員の業務の関係で、地方公共団体が国家賠償法1条1項又は安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うか否かを判断するに当たっては、当該地方公務員が従事した業務に係る諸般の事情を総合的に考慮すべきであるが、その際には、認定基準とともに労災認定基準に示された知見をもしん酌し得るものと考えられる。もっとも、上記の各補償等は、無過失の危険責任に基づく制度であって、上記損害賠償責任とは趣旨を異にするものであり、上記の各基準も、法令が定めるものではないから、これらに示された知見をしん酌し得るといっても、形式的に当てはめるべきものではなく、あくまでも、経験則上の一つの知見としてしん酌するというべきものである。

 また、本件との関連でみると、認定基準において、『その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象』があったものと判断できる場合の一つとして、『発症直前の1か月以上の長期間にわたって、質的に過重な業務を行ったこと等により、1月当たりおおむね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合』が示されているが、同時に、これ『に準ずるような業務負荷があったと認められる場合』が示されており、これらは、単に、業務の質的な過重性や時間外勤務の時間数だけではなく、関係する諸事情を考慮して、その負荷の程度を評価すべき趣旨を含むものと解される。

 また、労災認定基準においても、『業務による強い心理的負荷が認められること』の要件に関し、具体的出来事の心理的負荷の強度の具体例が示されており、その中には、仕事の量・質に関する具体例として本件に関連するものが含まれるが、そのような具体例も例示であるから、これらを踏まえ、関係する諸事情を考慮して、その負荷の程度を評価すべき趣旨を含むものと解される。上記の各基準に示された知見をしん酌する場合も、以上の趣旨を踏まえて行うのが相当である。」

 このように、静岡県警事件最高裁判決の補足意見は、損害賠償請求において、「業務・公務によって精神障害を発病して自殺(自死)が生じた」という因果関係の有無を検討する際、労災認定基準と公務災害認定基準において示された精神医学や心理学の知見(考え方)を経験則上の物差しの一つとして使用できると明示したのです。

 また、この補足意見は、損害賠償請求の因果関係を判断する上で、労災認定基準と公務災害認定基準に示された精神医学や心理学の知見(考え方)を踏まえることができるとしても、これらの認定基準に示された具体例に形式的に当てはめることは許されず、事件に関係する様々な事情を考慮しつつ業務による心理的負荷の強度を判断しなければならないと明示した点も意義があります。父母訴訟の控訴審は、事件に関係する様々な事情を考慮せず、公務災害認定基準に示された具体例に形式的に当てはめて静岡県の責任を否定しました。この補足意見は、そのような控訴審の認定を非難していると考えられます。

5 ご遺族の方々へ

 労働者や常勤の地方公務員が長時間労働やパワーハラスメントなどによって過労自殺(自死)した場合、労災認定や公務災害認定が出ていれば、その認定の判断で用いられた証拠や事実認定が、そのまま民事上の損害賠償請求の場でも強力な武器になり得ます。

 一方で、労災請求または公務災害認定請求をしていない場合でも、労災・公務災害の認定基準の考え方を民事上の損害賠償請求における立証に活かすことができます。また、認定基準に形式的に該当しないと思われる場合であっても、民事上の損害賠償請求の場において、業務の内容・量・時間を総合的に検討した結果、会社・地方自治体に対する損害賠償請求が認められることもあります。 

 ただし、これらの手続きは互いに複雑に絡み合っており、どのような順序でどのような証拠を集めるかによって、結果が大きく左右されます。一人で抱え込まず、ぜひ早めに弁護士にご相談ください。

>>自死遺族が直面する法律問題 -過労自殺(自死)-

>>解決までの流れ 過労自殺(自死)の場合 -労災-

>>解決までの流れ 過労自殺(自死)の場合 -損害賠償-

※1 最高裁判所判例解説民事篇平成12年度(上)358頁

賃貸物件内での自殺と心理的瑕疵の変遷について

 賃貸物件内で自殺が行われたとき、遺族が、賃貸人から、損害賠償請求を受けることがあります。

 この損害賠償請求は、物件内部での自殺が、心理的な嫌悪感を生じさせる行為であるとして、賃借人の契約違反であるとか不法行為であるという理由でなされるものです。

 一昔前までは、大家さんからかなり高額な請求を受けるというケースがよくありました。たとえば、自殺が行われた部屋のあるアパート全体の価格が下がったとして、アパートまるごとの減価分の損害賠償を請求するなどです。高額な請求になりますので、ご遺族にとっては、相当な心理的なストレスになっていました。

 賃貸物件内での自殺については裁判例が積み重なり、実務的な取り扱いの方向性も固まってきています。大家が当該部屋を1年間は賃貸できず、その後2年は賃料の半額でしか賃貸できないものとして、賃料相当額の2年程度の損害賠償を認めるというものです。物件の価値自体が下がったという損害は特別な事情がない限り損害として認められません。
大家からむちゃくちゃな請求がきたという相談も減少傾向にあると感じます。

 むちゃくちゃな請求がされているという相談が減少していること自体は良いことだと思いますが、実務的な取り扱いに疑問もないわけではありません。

 色々ありますが本稿では一点、賃貸物件内での自殺が心理的瑕疵を生じさせるということが本当に不動の事実なのか、という根本的な疑問です。

 この点、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」において触れられていますが、心理的瑕疵に該当するかどうかは「時代や社会の変化に伴い変遷する可能性もある」という大前提は大事だと思います。

 今のところ当たり前のように語られている自殺の心理的瑕疵ですが、諸外国では決して当たり前ではありません。欧米では、賃貸物件内で過去に自殺があったか否かを気にしない傾向が強く、告知義務すらないようなことも珍しくないようです。
これに対して、韓国、中国など東アジア圏では、日本と同様に物件内部での自殺を心理的瑕疵と捉える傾向が強いようです。心理的瑕疵というのが、決して固定的な概念ではなく、国や文化によってずいぶんと捉え方に差があるということが分かります。

 日本において、自殺というものに対する偏見、忌避感は、一昔前に比べると減少傾向であるようにも感じるのですが、いかがでしょうか。個人的には、少子高齢化・多死社会の到来によって、賃貸物件内で死というものが珍しくない事態になっていることが影響しているように感じます。この傾向は今後ますます強くなることでしょう。 

 賃貸物件での自殺に関する相談自体が減少傾向であるものの、なくなっているわけではありません。時代や社会の変化に伴って「心理的瑕疵」の概念が変容することを頭に入れて、ご遺族の立場から言えることをこれからも考えていきたいと思います。

>>自死遺族が直面する法律問題 -賃貸トラブル-

>>解決までの流れ -賃貸トラブルの場合-

SNSと自殺

1  自死遺族支援弁護団に相談される御遺族の中には、故人が自らSNS上で自殺志願者を募り、あるいはSNS上で知り合った相手と共に自殺を遂げるケースや、自らは自殺意図を有しない第三者がSNS上で自殺志願者を募り、自殺方法や自殺場所に関する情報提供を行ったり、それぞれに役割(例えば、必要な道具等の購入役、共に自殺する予定の仲間を各地からピックアップして、自殺場所まで移動するための運転役など)を与えて、自殺を遂げさせるケースによって自死遺族となった方々がおられます。しかも、そういった相談は増加傾向にあるように感じます。

2 自殺意思を有する者に対し、自殺方法や自殺場所についての情報提供を行ったり、道具を提供するなどの関与を行い、自殺を遂げやすくさせる行為は、法律上は自殺幇助罪(刑法202条)という犯罪行為に当たる可能性があります。もっとも、SNS上の「死にたい」という表現(裏側にある真意)には幅があり、自殺意図を表明したものから援助希求として、あるいは「辛い」という意味で使われる場合もあることから、仮に、援助希求として、あるいは「辛い」という意味で「死にたい」と書き込んだ者に対して自殺を誘引した場合は、自殺教唆罪(刑法202条)という犯罪行為に当たる可能性があります。

 最近では、福島、山形両県で交流サイト(SNS)を通じて知り合った10~20代の5人の自殺を手伝ったなどとして、自殺ほう助や未成年者誘拐などの罪に問われた福島市の無職男性(37)に対し、2026年3月6日、懲役5年(求刑懲役6年)の判決が言い渡されたという報道が記憶に新しいと思います。

3  自殺に関与したり、自殺の誘引・勧誘を行う情報については、X(旧Twitter)等のSNS運営会社や通信会社なども自主的に発見・削除対応等を行っているようではありますが、警察庁でも、インターネット上の違法情報や有害情報に対しては、IHC(インターネット・ホットラインセンター)を窓口として、サイト管理者等に対して削除依頼を行うなどの対策を行っています。令和8年3月12日付けで公表された「令和7年におけるインターネット・ホットラインセンターの運用状況について」によれば、違法情報を含む通報受理総数は63万2804件であり、そのうち通報ホットライン運用ガイドラインに基づいて分析した結果、自殺誘引等情報に当たると判断された通報は5321件(うち自殺関与は39件、自殺の誘引・勧誘は5282件)にのぼったそうです。

 上記通報に対し、削除依頼前に削除された129件を除く5192件に対してIHCから削除依頼を行ったところ、令和8年1月末の時点で、4241件について削除が完了しているとのことですが、依然として1000件近くが野放しの状態にあるのが現状です。

4  令和7年の人口動態統計(概要)によれば、出生率は平成28年以降低下し続けており、他方で、年齢別死因においては、10歳から44歳において自殺による死亡が最も高くなっています。

 上記年齢層は、SNSへの親和性が比較的高い層ですので、分析を進めていけば、SNS上の有害情報が自殺に寄与しているケースは相当数に上る可能性があります。

5 人が自死に至る過程は複雑ですので、その原因を分析し、対策を講じることは容易なことではありません。ただ、自殺意図を有している人も、「死にたい」気持ちと「生きたい」気持ちとの間で常に揺れ動いていると聞いたことがあります。そうだとすれば、「死にたい」という気持ちをSNS上で表明する人がいた場合に、生と死の間で揺れ動く気持ちを死の方向に動かすのではなく、生の方向に動かすように働きかけるきっかけとしてSNSが機能する社会であって欲しいと願わずにはいられません。 

解決事例を1件追加しました。

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賃貸物件において、賃借人が練炭自死したことによって建物が一部焼損したことにより、賃貸人から賃借人の相続人である遺族及び連帯保証人に対し、修繕費及び建物価値下落分の損害を賠償するよう求められた事件について、示談交渉では合意に至らず、訴訟上の和解で解決した事例
→こちらからご覧いただけます。

遅延証明電子化が鉄道人身事故に与える影響について

最近、遅延証明を電子化する鉄道会社が増えてきました。2026年5月現在、以下の鉄道会社が完全電子化、もしくは将来に向けて段階的な電子化を進めているようです。

(完全電子化した鉄道会社)

  • JR西日本       2021年2月〜(近畿・京阪神エリア等)
  • 西武鉄道        2023年3月24日
  • 東京メトロ    2026年4月1日
  • 京王電鉄        2026年4月1日

(段階的な電子化を進めている鉄道会社)

  • 東急電鉄          2024年より順次(WEB発行を原則化)
  • 相模鉄道(相鉄)2024年より順次(WEB移行を推進)

人身事故が発生した場合、鉄道会社から遺族に対して損害賠償が請求されることがあります。この損害の内訳についてみなさんはご存じでしょうか。

特急列車の場合は、特急券の払い戻し費用が発生します。そのため、普通列車と異なり賠償額が高額となる傾向があります。

他方で、普通列車の場合はどうでしょうか。損害として振り替え輸送費が請求されることは比較的想像しやすいと思いますが、もう一つ損害額の中で重要な費目が、実は人件費です。

人身事故が発生すると、遅延証明の発行などで、現在出勤している職員だけではなく、休憩中の職員を呼び出して業務を行ってもらう必要が生じるものと思われます。これらは時間外労働になりますので、多くの場合残業代も発生することになります。実際、損害賠償請求の内訳を見ると、人件費がかなりの部分を占めていたということも少なくありません。

遅延証明が完全電子化されれば、遅延証明の発行業務について人件費が相当程度抑えることができるようになると思われます。結果として、これらの会社については、遺族に対する損害賠償請求の金額も減少することに繋がるのではないか。電子化による経費節減効果の詳細についてまでは鉄道会社のHPなどを見ても記載が無いこと、事故の態様など人件費以外の要素もあることからすると一概には言い切れませんが、電子化が遺族の負担を軽減する可能性に期待します。

解決事例を1件追加しました。

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特急列車に投身自死した結果、鉄道会社から多額の請求が行われた事案において、精神科や心療内科の通院歴はなかったものの、他科の通院歴などを分析することで重症の精神疾患により責任無能力状態であったと主張し、鉄道会社から損害賠償請求を放棄するとの回答を得た事例
→こちらからご覧いただけます。

解決事例を2件追加しました。

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27歳の後期研修医が長時間労働、連続勤務、配置転換、及び患者やその家族からのクレームを受けたこと等によって強い心理的負荷を受けた結果、適応障害を発病して過労自殺(自死)した事案において、労災の認定を受け、病院に対する損害賠償請求も訴訟に至ることなく和解で解決した事例
→こちらからご覧いただけます。

システムエンジニアが顧客のシステムのトラブルなどにより、徹夜で対応するなどの長時間労働を余儀なくされ、自死した事案で、労災認定を得たうえで、損害賠償請求も和解で早期解決した事例
→こちらからご覧いただけます。

労災民事訴訟における過失相殺・寄与度減額について

1  はじめに

 労働者が過重労働により精神障害を発病し、あるいは著しく増悪して、自死するに至ったという事案では、労災保険給付の請求とは別に、会社に対して直接損害賠償の支払を求める場合もあります。

 労災手続では、精神障害の発病が、業務に内在する危険が現実化した結果であると認められれば、業務上の災害と認定されるため、原則として労働者側の落ち度は問題となりません。これに対し、労災民事訴訟では、会社側から、損害発生の助長・拡大には、労働者側の落ち度や性格、精神障害の既往歴なども影響したのではないかという主張がされることがあります。「過失相殺」や「寄与度減額」といわれるものです。

 たとえば、労働者の性格がまじめで責任感が強く、几帳面かつ完ぺき主義で、能力以上に仕事を自分で抱え込み、しばしば徹夜で仕事をするなど、業務遂行の方法に問題があったとか、もともと精神障害を患っていて、そのことを会社に申告しなかったために心身の健康への配慮ができず、精神障害の増悪を防げなかった、等の主張です。

 会社側の過失相殺・寄与度減額の主張が認められて、たとえば30%減額されるとすると、損害額全体からまず30%が控除され、そこからさらに、労災保険金等が差し引かれることになり、認容額は小さなものとなってしまいます。なので、過失相殺・寄与度減額が認められるか否かは、実務上は重要な争点の一つとなっています。

2 民法の規定

 民法では、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」とされています(民法722条2項)。これは、被害者に発生した損害を被害者と加害者との間で公平に分担するための制度です。

 そして、被害者の側に「過失」があった場合にとどまらず、被害者の性格等の心因的要因が損害の発生または拡大に寄与した場合についても、民法722条2項を類推適用して考慮することができるとされています。これは、労災民事訴訟においても、同様とされています。

3  参考となる最高裁判例

 では、裁判では、労働者側の性格や落ち度はどのように考慮されているのでしょうか。事案ごとに様々な判断が示されているのですが、ここでは2つの最高裁判決を引用したいと思います。

 第1に、いわゆる電通過労自殺事件の最高裁判決(最判平成12年3月24日・判タ1028号80頁)です。この事件では、労働者が、まじめで責任感が強く、几帳面かつ完ぺき主義であり、うつ病に親和的な性格であったことを、損害額の減額要因と評価すべきか等が問題となりました。

 電通事件最判は、「企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。しかも、使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う者は、各労働者がその従事すべき業務に適するか否かを判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるのであり、その際に、各労働者の性格をも考慮することができるのである。したがって、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因としてしんしゃくすることはできないというべきである。」としています。

 第2に、いわゆる東芝うつ病事件の最高裁判決(最判平成26年3月24日・労判1094号22頁)です。この事件は、労働者が、既往の精神疾患等自らの精神的健康(いわゆるメンタルヘルス)に関する情報を使用者に申告しなかったことを理由として、過失相殺をすることができるか否か、及び、個体側の脆弱性を理由に素因減額をすることができるか否かが争われた事件です。

 東芝事件最判は、精神疾患の既往歴の不告知については、①メンタルヘルスに関する情報は、労働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等にも影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であること、②使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ、労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきこと、③本件においては、過重な業務が続く中で、労働者は、体調が不良であることを使用者に伝えて相当の日数の欠勤を繰り返し、業務の軽減の申出をするなどしていたものであるから、使用者としては、そのような状態が過重な業務によって生じていることを認識し得る状況にあり、その状態の悪化を防ぐために労働者の業務の軽減をするなどの措置を執ることは可能であったことなどの点を考慮して、使用者が労働者に対し上記の措置を執らずにうつ病が発症し増悪したことについて、労働者が使用者に対して上記の情報を申告しなかったことを重視するのは相当でないとして、過失相殺を否定しました。

 また、個体側の脆弱性については、上記の電通事件最判の規範が労働者の脆弱性の判断にも適用のある規範であることを前提として、「同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れる脆弱性などの特性等を有していたことをうかがわせるに足りる事情があるということはできない」として、素因減額も否定しました。

4 まとめ

 以上の最高裁判例からすれば、業務とうつ病等の精神障害の発病(さらに自殺)との間に因果関係が認められ、会社側の安全配慮義務違反もある場合に、労働者側の体質や心的要因を理由として過失相殺や寄与度減額することには、抑制的であるということができるかと思います。

 過失相殺は、損害の公平な分担を目的とした制度ですが、使用者は、労働契約に基づき労働者の心身の安全を確保する第1次的な責任を負っており、個性のある労働者の心身の健康状態、意欲等を勘案しつつ人事権を行使する権限をもち、現実にコントロール可能なのも使用者です。使用者が労働者に対して過重な業務を課す一方で、使用者として必要な労務管理(労働時間・仕事量の適正化、人員配置・調整等)をしないという安全配慮義務違反が存する事案において、労働者側の体質や心的要因を理由に過失相殺の適用又は類推適用により減額するのは、かえって公平とはいえないといいうるでしょう。

よくご質問されること

 過労自殺(自死)のご依頼を受けると、遺族の皆様によく聞かれるのが、「今何の手続をしているのかわからなくなってしまいました」というご質問です。(私のご説明がわかりにくいのも原因かもしれませんが、)過労自殺(自死)の事件では、たくさんの手続を順番に、または平行して進めることになるので、確かにわかりにくいかもしれません。もちろん、何度聞いていただいても良いのですが、せっかくなので、まとめておきたいと思います。

 本弁護団のHPでも、「自死遺族が直面する法律問題」の「過労自殺(自死)」の項目で記載しているように、労働者である故人が過労自殺(自死)で亡くなった場合には、大きく分けて、労災保険の請求と会社に対する損害賠償請求ができます。それぞれ、完全に独立した手続で、どちらかだけを請求することもできますし、両方同時に請求もできますし、どちらかを先行させて請求することも可能です。

 更に、これらの請求の前に、裁判所を通じて証拠保全手続を行うこともありますし、会社に対して直接証拠の任意開示を請求することもあります。

 従ってこれらを組み合わせて、例えば、「証拠保全手続」→「労災保険申請」→「損害賠償請求訴訟」の順番で手続を行う場合、それぞれ「裁判所の手続」→「行政上の手続」→「裁判所の手続」になります。労災保険申請で不支給決定が出た場合には、これらに追加して、途中、審査請求(行政上の手続)や行政訴訟(裁判所の手続)を行うことになりますので、確かに途中で、今は何の手続中?となってしまうかもしれません。

 複雑に思われるかもしれませんが、だからといって省略するとご遺族に大きな損失が出てしまうかもしれません。証拠保全は、そこで得られた結果を労災保険請求や会社に対する損害賠償請求をする場合の重要な証拠とすることでできますので、手元に証拠が少ない場合には欠くことはできませんし、労災保険請求と会社に対する損害賠償請求では、下記のように違いがあります。

 まず労基法上、使用者(会社)には、労働者が業務上亡くなった場合には、遺族補償や葬祭料を支払う義務がありますが、会社に資力(支払能力)が無い場合には、遺族は補償を受けることができません。しかし政府が所管している労災保険制度(労働者災害補償保険制度)を利用すれば、会社の資力に関係なく遺族が一定の補償を受けることができます。しかも、労災保険制度には、会社の過失が要件にならない無過失責任という大きなメリットがあります。遺族は会社の過失を証明しなくても良く、また、一般に会社に対する損害賠償請求の裁判よりは短い期間で手続が終わるため、請求のハードルが会社に対する損害賠償請求よりも低く、我々の弁護団では労災保険請求を先行させるのが通常です。

 しかしながら、労災保険制度では、慰謝料は補償の対象外であり、また、補償額も法律で規定された一定額に限られるなどのデメリットもあります。

 そこで、会社に資力があり、過失もある場合には、次に会社に対する損害賠償請求を行うことになります。会社の過失を立証しなければなりませんし、裁判手続が必要になることも多いので、簡単ではありませんが、認められれば慰謝料や労災保険制度では支払われなかった逸失利益の支払も認められるという大きなメリットがあります。

 以上のような違いから、時間はかかりますが、労災保険請求と会社に対する損害賠償請求の両方を検討することとなります。 なお、労災保険給付が認められた場合には、会社によっては、労災上積補償が行われる場合があります。会社が、労災保険給付が認められた場合には、労災保険給付の金額に上積して補償する制度を設けている場合があるのです。但し、このような上積補償制度を設けることは法律上の義務ではないため、制度を設けていない会社に対しては残念ながら請求できません。労災補償給付が認められた場合には、念の為、会社に対して、上積補償制度が設けられていないか確認してみられるのが良いと思われます。

弁護団員を募集します!

1 加入のきっかけ

 私は、司法修習生の頃に、当弁護団の代表生越(おごし)弁護士に連絡し、「自死遺族支援弁護団に入りたいのでお願いします!」と言って加入した。

 というものも、私は、裁判官だった夫を自死で亡くして、司法試験を目指し合格、司法修習生としていろんなことを学ぶ中で、私と同じ母子家庭や自死遺族の方の力になりたいと強く思うようになり、いろいろ調べて行き着いた先が当弁護団の加入だった。

 最初の電話はドキドキだったが、生越弁護士は、私の話を聞き、「まず会おうか、こっちの方まで来れる?」と気さくな感じ。私も、「もちろん、伺います!」とアピール。こうして、生越弁護士と会って話をすることになった。後で知ったが、これが面接だったらしい。無事合格!いや、そもそも、不合格ってあるのだろうか・・・当弁護団に加入したいという弁護士は、そもそもやる気にあふれているので、不合格ということはないような気もしつつ・・・

2 やるべきこと

 こうして当弁護団に加入した。弁護団に入って、まずやることは、毎月1回行われる勉強会への参加。勉強会は18時から20時頃まで行われる。Zoomで行うので、自宅からでも参加可能、ありがたい。よし、私にとっては初めての勉強会、少し緊張するけど、勉強会がんばろう!と意気込んで参加する。しかし、「???!!」・・・みんなの話についていきたくても、難しい内容でわからないことが多すぎて、ついていけない・・・このままではまずい、勉強会が終わった後、再度一人でいろいろ調べ直して復習する。とにかくがんばるしかない!20時頃までの勉強会の予定ではあるが、まあ、時には議論が白熱して21時頃までかかることもある。でも、用事がある人は途中退出も〇、勉強会は録画されているので、後でその録画を見て勉強すればいい。そう、とにかくがんばるのであればいい。

 そして、次にやったことが、3月の24時間無料相談会への参加。

 生越弁護士もいる会場で参加することになった。今は、それぞれの携帯電話等に電話のアプリを入れて、自宅で相談を受けることも可能になっているが、昔は、会場に弁護士が集まって、電話相談を受けていた。このように一箇所に弁護士が集まるメリットは、実は大きい。他の弁護士の電話対応を学べるし、わからないことや協議したいことがあれば、その場で他の弁護士に聞くこともできる。初めての電話相談、ドキドキだったが、周りに当弁護団の弁護士がたくさんいるので、心強く、問題なく対応できた。しかも、他の弁護士のアドバイスの仕方等を学べたうえ、難しい事案の協議にも参加できたことで、とても充実した一日だった。

 最後に、当弁護団の総会への参加。一泊二日で行われるが、総会というより、勉強会の集大成という感じ。初日は、午後ずっと勉強会、勉強会が終わった後はお待ちかねの楽しい食事会。そして翌日、午前のほとんどは事件の振り返りというまたまた勉強。ほんと、よく勉強する弁護団。

 当弁護団に加入してからというもの、毎月の勉強会にも欠かさず出席して、24時間無料相談会で電話対応も無事に行えたことも評価され、毎週水曜日のホットラインの担当者となる資格を得ることになった。それからもう10年以上も経過しているが、未だに勉強することは多い。

3 今まで対応した事件

 今まで当弁護団で依頼を受けた事件はいろいろ、相続、過労自死、賃貸トラブル、生命保険、子どもの自死、多重債務、鉄道事故など。国家公務員が過労自死した事案で、国相手に損害賠償請求訴訟を提起し、事実上勝訴的な和解が成立し、高額の和解金を勝ち得たこともあれば、北九州市の非常勤職員(故森下佳奈さん)が上司からのパワハラ等が原因で自死したとし、市相手に遺族補償等請求訴訟を提起したが、残念ながら敗訴したこともある。しかし、実は、この敗訴した事件が未だに心に深く刻まれる事件となった。この訴訟を提起する前に、私たちは、北九州市に対し遺族補償等請求を行ったのだが、市が「非常勤職員は、条例で本人や遺族は請求できない」と回答し門前払いとした。これには、一緒に担当していた生越弁護士も驚いた。まさか、労働災害の補償を求める権利が、本人や遺族にはないということがあるのかと。労災隠しし放題ではないか!?こんなことが許されていいはずがない。一般の会社のアルバイトやパートだって労災請求できる、国家公務員の非常勤職員もできる、なぜ地方公務員の非常勤職員だけができないのか、おかしすぎる!!!こんな不合理なことが許されていいはずがないと、遺族補償等請求訴訟に加えて不当拒否に基づく損害賠償請求訴訟も併せて提起した。その訴訟の最中、原告母も何かしたいとの思いから当時の総務相宛に手紙を書き、非常勤職員の労働環境や災害補償制度を改善するよう求めた。なんと、その原告母の思いが当時の総務相に届き、総務省は2018年7月、全国の自治体に対し、非常勤職員本人らも請求できると条例に明示するよう通知し、北九州市も制度を改めることになったのである。訴訟では敗訴したが、私たちは当時の総務相と面会もでき、非常勤職員の災害補償制度も変えることができたことは、忘れられない貴重な経験となった。この故森下佳奈さんの事件については、非常勤職員の不合理な災害補償制度や厳しい労働環境に多くの記者が関心を寄せてくれて、今もなおネット上に記事等が数多く残っているので、ぜひ見ていただきたい。

4 当弁護団の実績

 自死遺族の方の力になるためには、日々勉強が大切!法律も変わるし、行政機関の通達等も変わる、手続きも変わる、やり方も変わる、裁判所の考え方も変わったりする。常に新しい情報を取り入れないと戦えない。だから、勉強は欠かせない。さらに、反省も大切、思うようにいかなかった事件については反省をして、次に生かす。当弁護団は、他の弁護士に断られた事件でも勝訴することもあるほど、実績のある弁護団。自死遺族の方を支援する団体や行政からの信頼も厚い。それもそのはず、当弁護団の弁護士は、どの弁護士も、多忙の中でも勉強や研鑽を欠かすことなく、精一杯対応するからだ。

 こうして、当弁護団の実績は積み重なり、当弁護団のHPへのアクセス件数も大幅に増加し、お問合せも増加中!毎日数件のお問合せがあることも多い。それだけ当弁護団への信頼が高いということ、ありがたい。

5 加入希望のお願い

 でも、このままでは、お問い合わせ件数の増加に対し、今いる弁護士だけでは対応できなくなるおそれが出てきた。私も数多くの事件を抱えており、これ以上は対応できないかも・・・

 というわけで、自死遺族の方の力になりたいという弁護士や司法修習生の方を大募集します!みなさま、当弁護団に加入して、一緒に自死遺族の方のためにがんばりましょう!  当弁護団への加入についてご検討されている方(弁護士及び司法修習生)は、下記記載の加入希望フォームよりお気軽にお問合せください。質問等もありましたら、遠慮なくお問い合わせくださいませ。志のある方からの連絡を心から待っています!

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