パワハラの事案は、長時間労働が問題となる事案と異なり、立証の方法が非常に限定されます。具体的には、パワハラを直接見ていた従業員らがパワハラの様子を証言してくれるか、パワハラの言動が録音されているか、パワハラがメールや文書の形で行われていてそれらが残っているなどです。
本件は、会社がある程度パワハラの調査を行っていました。その結果、パワハラを直接見ていた従業員らや加害者に対して聴き取りを行い、定規で小突いたこと、大きな声を出したこと、襟首を掴んだこと、及び胸ぐらをつかんだことまでは事実が確定していました。
しかし、配置転換によってパワハラ上司から離れた後、急激に症状が悪化して心療内科に通院し、休職するまで6か月以上空いていたため、発病時期が問題となりました。
労基署、審査官、審査会は、いずれも発病時期を急激に悪化して心療内科に通院した時期と考え、発病前6か月の間にはパワハラが存在しないため、業務外と判断しました。
行政訴訟においては、パワハラを受けていた時期にうつ病等を発病した旨の医学意見書を提出すると共に、元同僚を証人尋問してパワハラの苛烈さや体調の変化を立証しました。
判決では、パワハラを受けていた時期に精神障害を発病し、その後、配置転換によって一旦安定したように見えるものの、問題となる上司の話になると症状が出るなど不安定な状態が続いていたことから寛解しておらず、最終的に悪化して休職につながったとして業務起因性を肯定し、逆転勝訴判決を下しました。