新築の賃貸マンションにおける自殺(自死)の事案で、マンション所有者から、連帯保証人であったご遺族に対し、転売予定であったことを理由に数千万円程度のマンション全体の価値の下落があったとして、極度額である260万円の損害賠償請求がなされた事例

法的手続の内容

 ご子息の死が明らかとなって間もないころから、賃貸借契約の連帯保証人であるご遺族に対し、賃貸物件の管理会社の担当者から、脅迫的な口調で260万円の支払い要求がなされていました。ご遺族の憔悴も大きく、これ以上の対応は困難だということで、その後の交渉等について受任しました。

 受任後は、まず、ご遺族と共にご子息の部屋に赴き、室内の損傷部位を確認し、写真に収めるなどして記録化しました。その上で、ご遺族の代わりに退去の立会いを行い、その後、損害の内訳について、交渉を開始しました。

 当弁護団介入後の所有者からの当初の請求額は、賃料3年分の損害金と室内全体の壁紙等の張替えを含む原状回復費用を合わせて200万円を超える高額なものでしたが、当方から、裁判基準に即して賃料相当損害金は2年分が相当であること、国土交通省のガイドラインによれば、自死のあった場所と関係のない範囲の壁紙等の張替えに応ずる義務はないことを主張して、最初の請求額の半額程度の解決金の支払いで、無事に合意に至りました。

 このほか、自死された方には、奨学金を含む数百万円の債務があることが判明しましたので、上記の交渉と併せて相続放棄の手続きも進め、ご遺族の直面する法律問題を一挙に解決することができました。

法的手続を終えて

賃貸物件内で自死が起こると、「事故物件」という扱いになることが多く、所有者としても、その後の収益に大きな影響が生じてしまうことから、感情的になり、裁判での解決水準を超える請求がなされるケースが多いといえます。ただでさえ、大切な方を亡くされて憔悴しているところに、多額な損害賠償請求が重なることから、ご遺族の心痛は計り知れません。
この事案では自死発生から2週間後くらいに相談を受け、比較的早い段階から受任したこともあり、自死発生後の室内の記録化や退去立会いに代理人として介入し、争点の拡大を防げたことが良かったと思います。

自死遺族が直面する
様々な法律問題について、
下記でさらに詳しい解説をしています。