会社員が、仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があったことによって精神疾患を発病して自死した事案において、労働基準監督署長は労災と認めなかったものの、審査請求したところ一転して労災であると認められ、その後、会社に対して民事損害賠償請求訴訟を提起し、尋問前に和解によって終了した事例

法的手続の内容

⑴ 証拠保全、労災申請

 弁護団に相談する前、遺族は、会社から求められて念書を作成させられていました。念書の内容は、遺族が会社を訴えることはしないという内容のもので、遺族は当初、この念書を作成していたので、会社に対しては何も請求できないと考えていたようです。

弁護団としては、このような念書には何ら法的効力がないと考え、また、このような会社に対しては任意交渉により資料の提出を求めるのではなく証拠保全の申立てをして資料を入手すべきと考え、証拠保全を申立て、証拠保全が実施されました。

証拠保全で得られた証拠を検討し、証拠保全から約半年後に、労災申請をしました。

しかし、労災申請から約10か月後、不支給決定となりました。労働基準監督署長は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」こと及び「上司とのトラブルがあった」ことを認めつつ、それぞれ心理的負荷の強度は「中」であり、全体として評価しても「中」であると評価しました。

⑵ 審査請求

 遺族と協議した上で、審査請求をしました。

弁護士からは意見書を3通提出し、その間、口頭審理を実施して遺族による意見陳述や労働基準監督署の担当者に対する質問等を実施しました。

その結果、不支給処分は取り消され、遺族補償給付及び葬祭料が支給されることとなりました。

労災申請から数えて、3年以上経過していました。

⑶ 民事損害賠償

 労災認定がなされたことを踏まえ、会社に対して損害賠償請求書を送付して交渉による解決を目指しましたが、納得のいく回答は得られず、やむなく訴訟を提起することとなりました。  提訴してから約1年、主張立証のやりとりをし、証人尋問を実施する前の段階で和解が成立しました。

法的手続を終えて

最初に相談を受けてから民事損害賠償の解決まで、6年を要しました。
途中、依頼者のお子さんが、無事大学に入学したとのお便りをいただいたことがありました。大学への入学それ自体はお子さんの努力によるものですが、労災認定を得ることにより、ご遺族の将来の選択肢を増やすお手伝いができたのであれば、これ以上望むことは無いと思った出来事でした。

自死遺族が直面する
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