経験が無い状態で介護施設の所長となった労働者が長時間労働に従事する中で部下とのトラブルが生じたため、賃貸マンションから投身自死した事案において、賃貸人からの損害賠償請求の可能性や消費者金融からの借金があったため、相続期間の伸長を2年程度行っている間に労災を請求し、労基署及び審査官段階では不支給となったものの、再審査請求で逆転して労災が認定されたことから(労働保険審査会平成29年9月22日裁決(平成28年労第373号))、労災から支給された金銭によって借金も解決した事例

法的手続の内容

 労災請求については、ご遺族の手元に故人の労働実態を証明する資料が存在しなかったため証拠保全を実施して、介護施設においてパソコンのログや業務日誌等の資料を入手しました。その上で、労基署に対して、パソコンのログ等を踏まえて故人が長時間労働に従事していたこと、所長になることで業務内容が変化したこと、部下とのトラブルが生じたこと、及び利用者が急変した際に対応したことなどの心理的負荷を主張しました。もっとも、労基署は、パソコンのログを証拠として採用せず、所長として長時間労働をする必要性がなかったと認定して不支給としました。また、審査官も同様の判断を行い不支給としました。そこで再審査請求を行ったところ、労働保険審査会は、経験がない状態で所長となったことを認定し、長時間労働の必要性があったとして、労災の支給を決定しました。

 会社に対する損害賠償請求の可能性を残すため、消費者金融からの債務について、労災の結論が出るまで2年程度、熟慮期間の伸長を繰り返しました。通常、熟慮期間の伸長は家庭裁判所に対する書面で行うことができます。しかし、最後の伸長の際には家庭裁判所から呼出を受けたことから、裁判官に対して直接事情を説明し、伸長が認められました。労災の支給後に単純承認を行い、労災から支給されたお金で消費者金融に対する借金を支払いました。なお、賃貸問題については、最終的に賃貸人から損害賠償請求を受けない形で終了しました。

法的手続を終えて

ご遺族から「職場が原因で亡くなったのでは?」というご相談を頂いていましたが、消費者金融からの借金の問題もあったため、可能な限り熟慮期間の伸長を続けて、最大限にご遺族に経済的利益が残るように配慮しました。
労災が再審査請求までもつれて時間がかかったためご遺族にご負担をかけてしまったと思います。最初の打ち合わせでご自宅にお邪魔した時には赤ちゃんだったお子さんが、最後の打ち合わせの時はジブリのDVDを楽しそうに見てました。より時間のかからない事件処理が必要だと感じました。

自死遺族が直面する
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