大卒の新入社員が運送業に就職した後、長時間労働と所長からのパワハラによって適応障害を発病して自死した事案において、労災が認定され、会社に対する損害賠償請求訴訟も仙台地裁及び仙台高裁において勝訴し、会社と共に所長に対しても同額の損害賠償義務を認めた事例(仙台地裁平成25年6月25日判決、仙台高裁平成26年6月27日判決)

法的手続の内容

 訴訟での主な争点は、まず適応障害を発病していたか否かが問題となりました。若年労働者のケースでは、中年の労働者と比較して、体力があるため精神障害の症状が外部から見て分かりにくいケースが多いといえるのですが、本案はまさにその様な事案でした。小さな様子の変化などを積み重ねて適応障害の発病を主張しました。

 また、パワーハラスメントの有無も問題となりました。故人は新入社員ですからミスをするのは当然ですが、上司は故人の些細なミスの度に「馬鹿野郎」「帰れ」などと怒鳴っていたので、このような指導がパワーハラスメントに該当するか否かが問題となったのです。

 仙台地裁の一審判決は、会社に対する損害賠償請求は認めたものの、上司に対する損害賠償請求は否定しました。

 そこで仙台高裁に控訴したところ、仙台高裁は、会社に対する損害賠償請求のみならず、上司に対する損害賠償請求を認め、その金額を同じ金額としました。仙台高裁は、故人が新卒の社会経験も就労経験も乏しかった若年労働者であることを適切に評価した上で、指導に関してもパワーハラスメントという文言は使用しなかったものの、故人の成長の度合いに応じて適切に指導すべきと認定し、上司の責任を肯定しました。

法的手続を終えて

当職は、ご遺族が会社などに対する民事訴訟を提起したものの、代理人弁護士の能力に不安を感じて、途中から交替して代理人を務めた経験が何度かあります。
ご遺族にとって大切な訴訟ですから、依頼される弁護士が同種事案をどれだけ経験しているか、過去に判例を取ったことがあるのか、手続の流れを含めて十分な説明をしてくれるかなどチェックして頂き、もし気になったことがあれば是非セカンドオピニオンを求めて頂ければと思います。
また、本件の判決のうち、故人の成長の度合いに応じて適切に指導すべきと認定した部分は、新卒の新入社員が受けた心理的負荷をどのように判断するかという点において、様々な事件で引用されるようになりました。企業内の研修でも用いられているようです。少しでも若年労働者の過労自殺が減少することを願うばかりです。

自死遺族が直面する
様々な法律問題について、
下記でさらに詳しい解説をしています。