内装業の会社に勤務する従業員が長時間労働等によってうつ病を発病して自死した事案において、労災認定を受け、損害賠償請求訴訟も札幌地裁において勝訴判決を受けた事例(札幌地裁令和3年6月25日判決)。また、消費者金融などに対する債務も労災からの年金によって完済した事例

法的手続の内容

 最初のご相談は「家族が借金を残して亡くなったので相続放棄をしたい。」というご相談でした。しかし、借金の内訳を確認すると、内装業の会社に勤務していた故人が精神障害となって働けなくなり、その間の生活費として借りている部分があることが分かりました。そこで、相続期間の伸長を行いながら、労災を請求して借金を返すという方針を立てました。

 まず、労災ですが、故人は現場で内装を行う作業員であったため労働時間の把握が十分ではありませんでした。そこで、会社に対して証拠保全を実施したのですが、会社側が担当者不在を理由に資料の提供を拒み、証拠保全が夜までかかりました。最終的には証拠保全によって勤務日報など労働時間に関する資料を入手して労働時間を立証しました。

 また、故人には心療内科や精神科の通院歴がなかったため、家族から様子の変化などについて詳細な聴き取りを行うと共に、ある日突然現場を放棄して出社しなくなったことなどを踏まえて、精神障害の立証を行いました。

 労災は無事支給決定が下り、年金で消費者金融からの借金を返済することが出来ました。

 会社に対する損害賠償請求訴訟では、やはり労働時間が最大の争点となりました。

 会社の主張は「拘束時間はたしかに長いが、その間には休憩もたくさんあるため、拘束時間=労働時間ではない。」というものでした。そこで、同業の方から仕事の流れを聞いた上で、作業日報から作業内容を特定して、1日毎にどれだけ作業のために時間を要するのか推定して主張を行いました。

 地裁の判決では、ほぼ原告側の主張が認容されて勝訴判決を得ることができました。

法的手続を終えて

この事件は証拠保全の裁判官に助けられたという思い出があります。
証拠保全という手続は、裁判官、書記官、申立人側の弁護士が故人が働いていた会社などに行って、労働時間を裏付ける資料などを保全する手続です。裁判手続ですので、担当する裁判官によって進め方が全く異なります。代理人は大阪の弁護士で、保全の場所は札幌でした。担当者が不在ということでどんどん時間が経過して、担当者が戻ってきたのはもう夕方だったと思います。大阪へ戻る飛行機に間に合うぎりぎりまで現場に居ましたが、時間的に終わりそうにありませんでした。
裁判官は17時以降証拠保全を続けることを一般的に嫌うのですが、この事件を担当してくれた裁判官は、「後は私達がちゃんと手続をします。」と仰って、代理人が現場を離れた後も手続を続けてくれました。証拠保全も担当する裁判官によって大きく結論が変わるということを改めて痛感した事件でした。

自死遺族が直面する
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