アスベスト(石綿)の吹付け作業に従事していた労働者がアスベスト肺を発症し、中皮腫の発症が疑われる中でうつ病を発病して自死した事案において、自死が労災であると認められた事例(岡山地裁平成24年9月26日判決)

法的手続の内容

 故人は若い頃にアスベスト(石綿)を吹き付ける作業に従事していました。アスベスト(石綿)の吹付け作業は大量の石綿に暴露するためアスベスト(石綿)肺を発病します。そして、アスベスト(石綿)肺はゆっくりですが長い時間をかけて徐々に悪化して呼吸困難を来し、中皮腫という非常に悪性度の高い癌を合併することがあります。

 ご遺族が労災を請求したところ、労基署の判断はアスベスト(石綿)肺の悪化は認めたものの、精神障害の発病前の悪化の程度は大きくないと認定して業務外との決定を行いました。

 行政訴訟では、アスベスト(石綿)肺の闘病苦による心理的負荷は、治療法が存在しない状態において、病状が持続的、慢性的かつ不可逆的に増悪することにより、常に、息苦しさ、咳、痰などの身体的な症状による慢性ストレスを何十年という極めて長期間にわたり、24時間365日受け続ける点に特殊性があることなどを医学文献に基づき主張しました。

 判決は、アスベスト(石綿)肺の闘病苦による心理的負荷の特殊性を踏まえて、自死が労災だと認定しました。

法的手続を終えて

アスベスト(石綿)肺の事件は、現実に働いていた時期が何十年も前のため、どのような労働環境にあったのか分からないことが少なくありません。もっとも、故人のお人柄もあり、昔の職場の同僚の方に話を聞くことができ、吹付けの現場の酷さを立証することができました。
なお、令和5年9月1日に労災の認定基準が改定となりましたが、この事件を踏まえて、職業病によって長期療養をしている方の労災認定のハードルが少し下がりました。少しずつでも判例を積み重ねることの大切さを教えて頂いた事件でした。

自死遺族が直面する
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