ご遺族は他の弁護士らに労災の請求や証拠保全を依頼していましたが、依頼から長期間にわたって殆ど事件処理を行わなかったため他の弁護士らを解任し、当職らが担当することになりました。
故人が勤務していた病院は高度医療を提供する有数の中核病院であり、故人も難しい症例に適切に対応するため日々の研修に励んでいました。そのような状況の中、研修の科がより緊急性の高い科となった結果、手術などに立ち会うことも増え、さらに病院内で働く時間が伸びていきました。
現在の医師の勤務状況は電子カルテのログによっておおまかに知ることが出来ます。電子カルテは、どの医師が何時から何時までどのような作業を行っていたのかを全て記録しているからです。
労災では、故人が電子カルテにアクセスしていた時間が、労働なのかそれとも自己研鑽なのかが問題となりました。実際の治療と関連して電子カルテにアクセスしていた時間と、例えば、患者さんの回診や治療を正確かつ適切に行うためにカルテを読んだ時間を区別すべきではありません。しかし、労基署は後者を労働時間ではなく、前者だけが労働時間であると認定し、最終的には労災を認定しました。しかし、労基署が認定した時間外労働時間は月80時間程度でしたので、当職らの主張していた時間外労働のおよそ半分が自己研鑽として労働時間ではないと認定されたことになりました。