住宅メーカーに勤務する2年目の社員が、担当顧客からの執拗かつ威圧的なクレームを受けたことなどによりうつ病を発病し自死した事案において労災認定を得ることができた事例

法的手続の内容

 当初、長男を自死で失ったご両親から相談をお聞きしました。

 事務所で、故人の父親と面談をした際に、会社から貸与されている携帯電話内に録音されていたクレームを確認しました。その録音は、短時間でしたが、顧客が大声で怒鳴りつけるもので、聞くだけで鳥肌が立つほど恐怖を感じるようなものでした。私たちは、当該顧客との関係が最も大きな原因であると考えたので、会社から当該クレームを行った顧客との関係性や事実経過等に関する報告を受けました。

 他方で、時間外労働時間に関する証拠はほとんどありませんでした。ご両親によると、会社から貸与されているタブレットを自宅に持ち帰って仕事をしたり、事業所に遅くまで残ることもあった様子でしたので、事業所への入退館記録や使用していたパソコンのログ等を会社から提供してもらいました。しかし、労災認定基準に達するような時間外労働時間までは証拠上、確認できませんでした。

 労災請求当時は「カスハラ」という言葉も世間的にまだ十分に認知されておらず、時間外労働時間も多くなかったため、労災が認定されるかは非常に微妙な事案でした。しかし、我々は会社からの受けた報告に基づいて当該顧客への一連の対応や上司の支援状況、本人の顧客に悩んでいた様子などを詳細に意見書にまとめ、労基署に提出しました。

 これにより、労基署も、2年目の若手の従業員が住宅という金額の大きな案件で当該顧客への対応を継続せざるを得ないことによる心理的負荷を認め、無事に労災認定を得ることができました。

法的手続を終えて

労働組合が調査したカスタマーハラスメント(いわゆる「カスハラ」)の調査で、「2年以内に被害に遭った」と回答したのはおよそ2人に1人という結果であり、最近ようやくその深刻さに光が当てられるようになりました。また改正された労災の認定基準も「顧客や取引先、施設利用者から著しい迷惑行為を受けた」とカスハラによる心理的負荷を項目として追加しました。
最終的に労災認定を得る直前に認定基準が改正されたことも追い風となりましたが、労災が得ることが容易ではない事件でも、労基署に対して、当時故人の置かれた状況や故人が受けた心理的負荷等を一つ一つ丁寧に伝えることの重要性を認識しました。

自死遺族が直面する
様々な法律問題について、
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