本件は2019年に自死されていますが、ご遺族が当弁護団に辿り着いたのは2022年でした。それまでの間、地元の弁護士に2回依頼したものの、いずれの弁護士もきちんと動いてくれなかったそうです。
亡くなった方は、無実の罪で懲戒解雇された後、眠れない等の症状が出てきたので、労災請求のために労基署の窓口を訪れましたが、労基署職員から「労災に該当しない」旨の説明をされて、労災請求を諦め、その後、自死されました。また、自死後のご遺族による労災請求は認められましたが、給付基礎日額は、会社が支払いを怠っている残業代を考慮しない不当に低いものでした。そこで、当弁護団は、労災請求の水際作戦について国家賠償請求訴訟を提起し、また、給付基礎日額決定の無効確認請求訴訟を提起しました。国家賠償請求訴訟は残念ながら、敗訴しましたが、無効確認請求訴訟については、当方の主張が認められて、会社が支払っていなかった残業代も入れて給付基礎日額を算定し直させることに成功し、ご遺族からは、労災の支給額が増えて、生活が少し楽になった、と感謝のお言葉をいただきました。
本題の会社に対する損害賠償請求については、会社側が解雇理由を捏造することを防止するため、訴訟提起前に証拠保全をしました。証拠保全の期日において、社長がなした「詐欺の証拠はあるが、警察に提出していて今、手元にない」という趣旨の供述が裁判所作成の調書に記録されました。そこで、訴訟提起後、「社長が証拠保全期日で述べていた『詐欺の証拠』を提出せよ」と当弁護団が求めると、なんと、社長が亡くなった方に「何も特別なことはないですから」などと言いながら、伝票にサインさせている様子が映った動画が詐欺の証拠として提出されました。この証拠は、詐欺の証拠どころか、社長の証拠捏造を裏付ける証拠でした。この件は、もともと長時間労働もあり、解雇理由がないにもかかわらず、解雇している事実が証拠上明らかでしたから、当初から勝訴の可能性が高いと考えていましたが、さらに、亡くなった方を騙して証拠を捏造している様子が映し出された動画が証拠として提出されたことから、勝訴を確信しました。裁判所は、亡くなった方を欺いてあたかもその方が本件詐欺に関与したかのような証拠を作成させた上で、警察署の取り調べを受けさせたこと、いわれのない犯罪嫌疑をかけられた末、自らの弁明を一切聞き入れられることなく、一方的に懲戒解雇されたことを認定して、会社の責任を全面的に認め、ご遺族らの請求を認容しました。実は、会社側は控訴してきましたが、控訴審で覆ることはおおよそ考え難い判決内容でしたので、解決事例として取り上げました。