生徒会長に就任した高校2年生の生徒が、学校のイベントの企画、準備、運営等の負担が集中し、うつ病を発症し、自死した事案で、独立行政法人スポーツ振興センター(以下「スポ振」といいます。)の死亡見舞金の受給が認められた事例

法的手続の内容

⑴ 事案の概要

 故人は、高校2年生の5月に生徒会長に就任し、当時コロナ禍で沈む学校生活を盛り上げるため、社会で活躍する講師を呼び、講演会を行うことを生徒会で企画しました。しかし、生徒会の委員の中でも、故人に対して積極的に協力する者は少なく、講師の選定、企画を全校生徒に紹介するためのポスターやチラシの作成、動画作成、講師との企画打合せ等の負担が故人に集中しました。また、故人が懸命に企画の準備を行っている中で、教員が故人に対して冷たく叱責したことで故人は精神的に不安定となり、心療内科に通うようになりました。故人は、仲の良い友人や祖母、母に対して、頻繁にLINEで、他の生徒会委員や教員の対応に対する愚痴を漏らしていました。最終的に、講演会の企画は無事に終了したものの、企画の終了後に教員から冷たい対応をされたことがきっかけとなり、自死するに至りました。

⑵ 対応

 故人の亡くなった後、故人の祖母や母から相談を受け、故人が生徒会活動による心身の負担の累積により、うつ病を発症し、自死したものとしてスポ振の死亡見舞金を請求することになりました。

 我々は、代理人として、学校に対して、生徒会活動・講演会の企画準備に関する資料を提供し、教員の認識等を聴き取り調査をするように依頼しました。また、故人の通っていた心療内科の主治医とも面談し、当時の故人の状態を確認し、意見書の作成を依頼しました。学校から提供された資料を参照しながら、故人のLINEでのやりとりを中心に、故人の置かれた状況、故人が心身の負担によりうつ病を発症した経過等を具体的に意見書に記載しました。その結果、我々が意見書に記載したとおりの事実経過が認められ、死亡見舞金の給付が認められました。

法的手続を終えて

統計上、「学友との不和」を原因とした自死の方が多く、いじめを原因とした自死の方が少ないとされています(もっとも、「いじめ」の分類が少ないことの問題点については2023年7月17日の生越弁護士のコラムをご参照ください)。
しかしながら、体罰やいじめではない自死事案でスポ振の災害共済給付が認められることはほとんどありませんでした。その意味で、明確ないじめが認められない本件事案で、スポ振の災害共済給付が認められたことは画期的な判断でした。明確な「いじめ」がなくてもご遺族として採りうる対応はあります。諦めずに、ご連絡いただければと思います(2024年5月6日のコラム「『いじめ』であることが否定された場合の遺族の対応として考えられること」参照)。

自死遺族が直面する
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