裁量労働制の濫用に要注意です

厚生労働省は、2022年7月15日に、「これからの労働時間制度に関する検討会」での議論をとりまとめた報告書を公表し、裁量労働制の適用対象を拡大に向けて現在、労働政策審議会において議論が続いています。

本来、労働時間は1週間40時間、1日8時間が原則であり(労働基準法32条)、例外的に一定の要件を満たすとその労働時間の枠を超えて働くことが許されますが、割増賃金(残業代)の支払が義務づけられています(労基法37条)。

これに対して、裁量労働制とは、業務遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要がある業務について、実際に労働した時間数ではなく、労使協定または労使委員会の決議で定めた時間数だけ労働したものとみなす労働時間の算定制度であり、割増賃金も支払われません。

①システムエンジニア、デザイナー、記者、建築士など一定の専門業務を対象とする場合は「専門業務型裁量労働制」、②「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」につき「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」を対象とする場合である「企画業務型裁量労働制」があります。

厚生労働省は、2021年6月25日に「裁量労働制実態調査結果」を公表しましたが、特に注目すべきは、過労死ラインを確実に上回るといえる労働者の割合が、裁量労働制の非適用労働者が4.6%であるのに対して、適用労働者は8.4%ということです。裁量労働制の適用労働者の約1割が過労死ラインを超える長時間労働を行っていることが分かりました。

また、裁量労働制の適用労働者に対する調査において、専門業務型の40.1%、企画業務型の27.4%の労働者がみなし労働時間が何時間に設定されているのか「分からない」と回答しています。

そして「みなし労働時間」は1日平均7時間38分でしたが、実労働時間は平均9時間であったことも分かりました。つまり、実際の労働時間よりも短い「みなし労働時間」が定められ、それを認識していない労働者が少なくない実態が明らかとされました。

労働時間規制は、労働者の生命と健康を確保するために不可欠です。

労働時間規制の例外である裁量労働制の対象業務が安易に拡大され、裁量労働制が違法に悪用・濫用されれば、労働者はますます危険にさらされてしまいます。

今後も、労働者が違法な裁量労働制のもとで働かされていないかどうかを厳しく確認していく必要があります。