12時間無料法律相談会を終えて

 2023(令和5)年9月16日(土)、12時間無料法律相談会が実施されました。

 電話とLINEを使用しての相談会でしたが、僕も電話相談を担当して複数の相談を受けました。

 弁護団は、年2回(9月は12時間、3月は24時間)、土日を含めた法律相談会を実施していますが、このような形態での法律相談会を実施する場合、かつては東京都内の法律事務所と大阪府内の法律事務所の2拠点に電話を設定し、各地から弁護士がそこに集合し、交替しながら受話器の前に座って待機して相談を受けるというものでした。

 しかし、最近は、各弁護士が事務所等でパソコンやスマートフォンを通じて電話を受けることが多くなりました。形態が変わったことにより、全国各地の弁護士が移動時間を気にせず法律相談会に参加できるようになり、その意味で電話相談体制は充実したものと思います。

 また、僕がこの弁護団に入った頃は電話相談のみで、LINEでの相談受付はしていませんでした。LINEでの相談受付も、毎回一定数あると聞いていますので、電話ができない・難しい方にとっての有用なツールになっているのではないでしょうか。

 弁護団では、ホームページでの相談を受け付けていますし、毎週水曜日(祝日等を除きます。)には12時から15時までホットラインを常設しています。 今回の12時間相談会で相談したかったけど相談できなかったという方は、ぜひこれらの方法で、お気軽にお問い合せ頂ければと思います。

精神医療に関する最高裁判決

 2023年1月27日、最高裁判所は、精神科病院に入院中の患者が無断離院して自死した事案につき、遺族の損害賠償請求を棄却する旨の判断を示しました。
 この事案の原審(高松高等裁判所)は、病院側に説明義務違反があったとする遺族の主張を認め、損害賠償請求を一部認容する旨の判断をしていました。
 判断が分かれたのは、この事案において「無断離院の防止策を講じている他の病院と比較した上で入院する病院を選択する機会を保障する必要性」があったか否かという点です。最高裁判所はこれを否定し、高松高等裁判所はこれを肯定しました。

 また、2019年3月12日、最高裁判所は、精神科に通院中の患者が自死した事案につき、遺族の損害賠償請求を一部認容した東京高等裁判所の判決を破棄して、遺族の損害賠償請求を全て棄却する旨の判断をしています。
 判断が分かれたのは、この事案において「本件患者が自死することについての予見可能性」があったか否かという点です。最高裁判所はこれを否定し、東京高等裁判所はこれを肯定しました。

 ところで、令和3年度の司法統計によれば、医療行為による損害賠償請求訴訟の認容率(訴訟提起後、判決に至った事案のうち患者側の請求が認められる割合)は約20.1%とのことです。これは、医療行為による損害賠償請求訴訟を含む金銭を目的とする訴え全体の認容率が約77.1%であることと比較して著しく低い数字であることは一目瞭然です。

 そのため、精神科医療に関連する事案については、これら最高裁判例で示されたような考え方も念頭に置きながら、慎重に検討する必要があると考えています。

>>遺族が直面する法律問題「医療過誤」

事実に始まり、事実に終わる

 弁護団では、生命保険・労働・賃貸・医療など、自死遺族の方が直面する様々な分野の相談を受け付けています。
 僕たち弁護士は、相談者の方から、どのような事実があったのかをうかがい、その事実を前提として、必要な手続や見通しについて、法律論・裁判例・経験等を踏まえた法的アドバイスをすることになります。

 それと並行して弁護士が次に考えるのは、相談者の方が言葉としてお話になった事実を、証拠をもって裏付けることができるかどうかということです。

 それは、最終的な紛争解決手段である裁判(訴訟)が、事実に法律を適用して結論を得る手続であり、裁判所に事実を適切に認定してもらうためは、証拠による裏付けが必要不可欠になるからです。

 どこかで聞いた気もしますが、真実はいつも一つ。でも、常に真実が解明されるとは限りません。「こういう証拠があれば事実が明らかになったのに…」と思うことは山ほどあります。

 また、事実を裏付ける証拠は、時間の経過とともに失われていくことが多く「もっと早く相談してもらえたら…」と思うこともよくあります。

 そういえば、先日開催された弁護団の勉強会でも、事実を裏付ける証拠をどうやって集めるべきか、意見交換していました。いくら理屈を勉強しても経験を蓄積しても「事実の壁」が立ちはだかりますが、臆することなく立ち向かっていきたいと思います。

法律専門職として

 僕が弁護士登録したのは、2009(平成21)年12月なので、もうすぐ弁護士登録してから丸12年になるようです。
 もっとも、弁護士の経験年数にほとんど意味は無いと、実感することがあります。

 当たり前ですが、12年目だろうが、1年目だろうが、30年目だろうが、社会からは一人の弁護士として見られます。
 裁判所に行けば、自分より長く経験を積んだ相手方弁護士、検察官、裁判官らと対峙しなくてはなりません。

 他の職業でみると、たとえば医師も同様ですよね。
 僕が所属している別の弁護団(患者側の立場で医療問題に取り組んでいる弁護団です。)において、ある事象につき法的責任を追及できるかどうかを調査することがあるのですが、その際に、医師の経験年数が結論に大きく影響を及ぼすことはほとんどありません。1年目だろうが、12年目だろうが、30年目だろうが、医師が患者に対して負う責務は等しく存在するからです。

 そのようなことを思うと、自分が法律専門職として果たすべき責務も、12年目だろうが1年目だろうが変わらないはず。職責を常に全うできているのか、このあと、弁護士で居続ける限り、自分に問いかけ続けなくてはならないのかもしれません。

 最後に、告知です。
 この弁護団では、24時間相談会を毎年1回実施していますが、昨年から、12時間相談会も実施しています。
 2021年9月25日(土)昼12時から深夜0時までの12時間、自死遺族の方を対象に無料法律電話&LINE相談会を実施予定です。何かお困りごとがあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。

⇒9/25(土)12時間無料法律電話&LINE相談会について詳しくはこちら

ウェブ会議システムの波

弁護士の晴柀(はれまき)です。

1 苗字のこと

 富山県出身なのですが、地元でも珍しい苗字でした。
 初対面の方には、「なんて読むんですか?」「珍しい苗字ですね。」等と、必ず言われます。
 この記事を読んでいただいた方が、もし僕のところに相談にいらした時には、苗字をサラっと読んで頂けるのでは、などと少しだけ期待してこの原稿を書き始めています。

2 打ち合わせのこと

 昨今のコロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、僕ら弁護士の仕事のスタイルもだいぶ様変わりしました。
 対面の打合せはほとんどなくなり、ウェブ会議システムを活用するようになりました。
 「コロナ後」も、このようなスタイルが続いていくと予想しています。
 まだまだ弁護士事務所の敷居は高いと言われることもあるようですが、自宅に居ながら弁護士に相談できるということであれば、高い敷居を(物理的にも)またぐ必要はないですし、もしかしたら弁護士に相談しやすい世の中になったといえるのかもしれません。

3 裁判期日のこと

 裁判期日も、ウェブ会議システムを活用して実施されるようになりました。
 これまで、遠隔地から電話会議で参加していたことはあったのですが、電話会議だと裁判官や相手側の弁護士の顔が見えないためその場の空気を読みづらく、無意識のうちに発言が抑制的になっていましたが、そのような抵抗がなくなったように感じます。
 国の予算のうち、司法予算が占める割合は極めて少ないという事情もあるようで、全ての裁判所に浸透するにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、裁判を受ける権利(憲法32条)を充実したものとするツールとして、ウェブ会議システムが活用されるようになることを願っています。

4 おわりに

 2や3を書いて気がついたのですが、当弁護団では、だいぶ前からウェブ会議システムを活用して相談や打ち合わせを実施していました。その意味で、自分は他の弁護士よりもスムーズにウェブ会議システム活用の波に乗れたように思います。
 当弁護団では、祝日を除く毎週水曜日、弁護士が待機してホットライン(電話相談)を実施するとともに、メール相談も受け付けています。ホットライン(電話相談)及びメール相談は無料で実施していますので、お気軽にご相談下さい。