2024(令和6)年3月26日、最高裁判所第3小法廷がある判決を言い渡しました。
事案は、故意の犯罪で亡くなった方の遺族らに支給される給付金(犯罪被害者給付金)を、被害者と同性のパートナーの方が請求したところ、同性パートナーは請求主体に該当しない(具体的には「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当しない)として請求を認められなかったという事案です。同性パートナーの方が訴訟を提起しましたが、地裁・高裁ともに請求は認められず、最高裁に上告をしていました。
最高裁判所は、法律の目的を丁寧に検討した上で「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を給付金の支給対象としているのは、犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いからであって、「そうした打撃を受け、その軽減等を図る必要性が高いと考えられる場合があることは、犯罪被害者と共同生活を営んでいた者が、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない」として、犯罪被害者と同性の者は「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得ると判断しました。
なお、これは裁判官5名のうち4名の判断であり、1名は反対したようです。
さて、当弁護団が参照することの多い労働者災害補償保険法においても、たとえば遺族補償年金に関する定め(第16条の2)で「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」という文言があります。
そのため、上記最高裁判決の判断が、同法をはじめとする他の法令に影響する可能性があることは言うまでもなく、そのことは反対意見でも「他法令に波及することは当然想定され、その帰趨次第では社会に大きな影響を及ぼす可能性がある」などと言及がありました。
労災実務において、上記最高裁判決と同様の解釈をして労災が認められたという事例は寡聞にして知りません。
遠くない将来、労働者災害補償保険法における「事実上婚姻関係と同様の事情があった者」も、上記最高裁判決と同様に解釈して、同性パートナーの方についても労災が認められるようになることも十分に考えられ、社会や関係法令の動きには注目していきたいと思っています。