自死遺族弁護団の成り立ちについて

自死遺族支援弁護団が結成された理由とは?

1 専門性を有する複合的な法律問題

自死遺族が複数の法的問題に直面してしまうことは珍しくありません。
 また、自死遺族が直面する法律問題の中には、労災の請求、生命保険の請求、賃貸物件における大家からの損害賠償請求、医療過誤等、高度な専門性を有する法律問題が含まれている場合も少なくありません。
 例えば、自死遺族のAさんは、弁護団員との最初の打ち合わせの際、まるでトランプのような弁護士の名刺の束を見せてくれました。そして、「どの先生に相談しても難しいと言われて・・・。」と真剣に悩んでいました。
 Aさんのお話を伺うと、Aさんの夫は職場で働き過ぎであったことに加え、消費者金融から300万円程度の借金がありました。また、賃貸物件で亡くなったことからAさんは大家から損害賠償の請求を受けていました。さらに、住宅ローンの生命保険が下りずに困っていました。
 労災の請求、借金、賃貸物件における大家からの損害賠償請求、生命保険の不払いという複数の問題を抱えてしまったAさんの事件を、多くの弁護士は、「難しい。」と返答してしまったのです。

2 体調と気持ちの問題

家族が自死で亡くなると、他の家族の方は多くの場合、心理的に様々な影響を受けます。うつ病になったり、PTSDとなったりする場合もあります。ある自死遺族の方は、「家族を亡くしてから、ずっと暗い井戸の底から座って上を見てたんです。そしたら、あっという間に数年が経ってしまって・・・。」と仰っていました。
 また、法律的な手続を行うことは、普通の人でも大変なことです。特に自死遺族の場合、相手方からの書面や尋問などで、体調を崩してしまう方もいます。ですから、自死遺族の代理人を務めるためには、手続の進行に合わせ、気持ちの変化や体調の変化に十分な配慮が必要となります。

3 平成22年12月の結成

 このような自死遺族を法的に救済することを目的として、平成22年12月に自死遺族支援弁護団が結成されました。自死遺族が抱えてしまう複数の専門性を有する法律問題について、体調と気持ちの問題にも配慮しながら適切な解決を目指すため、全国で、ホットラインやメールでの相談など、日々活動を続けています。