弁護士選びについて

 自死遺族の方が弁護士に事件を依頼することは人生で一度かも知れません。様々な思いや葛藤を抱えて依頼をされるのですから、自死遺族の事件について専門的な知識があり、経験も十分あって、心情にも配慮してくれる弁護士に依頼をしたいと考えるのは当然のことでしょう。

しかし、自死遺族の方が弁護士を選ぶことはとても難しいと思います。

 理由はいくつかあると思いますが、もっとも大きい理由は、医師のように専門化がなされていないため、自死遺族の方から見て依頼をしようとする弁護士が自死遺族の問題に強いのか分からないという点にあるのではないでしょうか。

 医師の場合、少なくとも内科、整形外科、産婦人科などの診療科で区別がされているので、腰痛で苦しんでいる人が眼科へ行ってしまうということはありませんし、花粉症で苦しんでいる人が心臓外科へ行くことはありません。

 もっとも、弁護士は医師の様に専門化が進んでいません。自死遺族の事件は、例えば、過労自殺(自死)、生命保険の自殺免責、学校でのいじめ自死など、それぞれに専門性と経験が必要となりますが、これらの問題についての専門性と経験を弁護士が持っているか、外から見ても分からない場合が殆どでしょう。弁護士会によっては分野毎に弁護士を検索することもできるようですが、「重点取扱分野」についてわざわざ「取扱う意思のある業務のことを意味し、必ずしも、専門業務、得意業務、あるいは取り扱ったことがある業務を意味するものではありません。」と注意書きを付けている弁護士会もあります。

 では、どうすれば安心して依頼できる弁護士を見つけることができるのでしょうか。私は弁護士に以下の3点について聞くことをお勧めしています。

まず第1に、自死遺族のどのような事件をどれだけ受任してきたかという点です。受任してきた件数が多いほど専門性が高く経験があるといえるでしょう。

第2に、事件の方針や今後の手続の流れがどのように進んで行くのかという点です。専門性が高く経験があれば、個別の事案毎に方針や今後の手続の流れを具体的かつ丁寧に説明することができるはずです。

第3に、セカンドオピニオンを自由にとって良いのかという点です。どれだけ専門性が高く経験を積んでいても完璧ということはあり得ません。他の弁護士のセカンドオピニオンが適切であれば、そのセカンドオピニオンを取り入れる柔軟性と謙虚さが、信頼関係の構築と維持につながるのだと個人的には考えています。

 もし、過去に自死遺族の事件を受任した経験がなく、手続や方針について具体的かつ丁寧な説明もなく、セカンドオピニオンをとることについて渋い顔をする場合は、他の弁護士に相談した方が良いかも知れません。

 なお、弁護士との契約は委任契約と呼ばれますが、委任契約はいつでも自由に解除することができますし、解除によって弁護士から金銭的な損害賠償を請求されることもありません。私は委任契約の際に「私に依頼することが嫌になったら、いつでも自由に委任契約を解除して他の弁護士に依頼することができますよ。」と説明しています。そのような説明を行うことが自死遺族の方にとって利益になると信じているからです。

自死遺族弁護団の成り立ちについて

自死遺族支援弁護団が結成された理由とは?

1 専門性を有する複合的な法律問題

自死遺族が複数の法的問題に直面してしまうことは珍しくありません。
 また、自死遺族が直面する法律問題の中には、労災の請求、生命保険の請求、賃貸物件における大家からの損害賠償請求、医療過誤等、高度な専門性を有する法律問題が含まれている場合も少なくありません。
 例えば、自死遺族のAさんは、弁護団員との最初の打ち合わせの際、まるでトランプのような弁護士の名刺の束を見せてくれました。そして、「どの先生に相談しても難しいと言われて・・・。」と真剣に悩んでいました。
 Aさんのお話を伺うと、Aさんの夫は職場で働き過ぎであったことに加え、消費者金融から300万円程度の借金がありました。また、賃貸物件で亡くなったことからAさんは大家から損害賠償の請求を受けていました。さらに、住宅ローンの生命保険が下りずに困っていました。
 労災の請求、借金、賃貸物件における大家からの損害賠償請求、生命保険の不払いという複数の問題を抱えてしまったAさんの事件を、多くの弁護士は、「難しい。」と返答してしまったのです。

2 体調と気持ちの問題

家族が自死で亡くなると、他の家族の方は多くの場合、心理的に様々な影響を受けます。うつ病になったり、PTSDとなったりする場合もあります。ある自死遺族の方は、「家族を亡くしてから、ずっと暗い井戸の底から座って上を見てたんです。そしたら、あっという間に数年が経ってしまって・・・。」と仰っていました。
 また、法律的な手続を行うことは、普通の人でも大変なことです。特に自死遺族の場合、相手方からの書面や尋問などで、体調を崩してしまう方もいます。ですから、自死遺族の代理人を務めるためには、手続の進行に合わせ、気持ちの変化や体調の変化に十分な配慮が必要となります。

3 平成22年12月の結成

 このような自死遺族を法的に救済することを目的として、平成22年12月に自死遺族支援弁護団が結成されました。自死遺族が抱えてしまう複数の専門性を有する法律問題について、体調と気持ちの問題にも配慮しながら適切な解決を目指すため、全国で、ホットラインやメールでの相談など、日々活動を続けています。