鬼滅の刃を読んで~言葉の暴力の怖さ

鬼滅の刃を読んでいて、はっとしました。

鬼の妻が、鬼の夫から暴力をふるわれ、「悪かったわ…謝るからもう許してよ 何に怒ったの?何が気にくわなかったの?」と涙ながらに鬼の夫に尋ね、かえってきた言葉は…「何に怒ったのかわからないのが悪いんだよ。」

この作者がDVの加害者の心理をよく知っていることに驚くとともに、小学校低学年の子どもまで広くこの漫画が読まれていることに少し怖さを感じました。家族や他人と思いやる優しい心の主人公から学ぶことが多い漫画ですが、敵の鬼のこうした面が描かれたりしているのです。

殴られる、蹴られるといった肉体的暴力だけでなく、暴力をほのめかしたり、自尊心を著しく傷つける言葉など精神的暴力により傷ついた方々のお話を聞くことが多いです。

家庭や職場など狭い空間では、腕力や声の大きい方が強く、たとえ間違っていても反論できません。反論すれば何倍にもなって自分に返ってきます。そのため、怒られないよう、暴力や暴言を受けないよう、相手の顔色をうかがってピリピリした空気の中で生活せざるをえません。

一方的に責められ続けるうち、自分の方がおかしいんじゃないか、悪いんじゃないかと思うようになったと目に涙を浮かべて話される場合も多いです。誰にも相談できず、自分を責め続けてきた方々に、あなたは悪くない、間違っていないと繰り返しお伝えしています。

精神的に追い詰められ、亡くなってしまわれた場合、ご遺族はどうしてこんなことになったの、誰が本人をここまで追い詰めたの?とわからないことだらけです。遺された書類、パソコン、スマホなどの記録の調査や関係者への聞き取りなどを通して、本人を追い詰めた具体的事実が少しづつわかってきたとき、ご遺族も「そりぁあ大変だったね。辛かったね。相手がひどい、悪かったよ、あなたは悪くない、間違っていない。」と、本人と対話ができるようになられる、ほんの少しだけ心が楽になられる、そんな気がします。