こんにちは、弁護士の細川です。
現在、自死にかかる生命保険問題について、本(の一部)を書いています。 自死に係る生命保険問題そのものについては、自死遺族支援弁護団のHPにも掲載されておりますので、そちらをご覧になっていただければと思います。
今回のブログでは、そこからスピンオフした話題について書こうと思います。
自死にかかる生命保険問題では、自死行為そのものを争うことは多くなく、ほとんどのケースでは、自由な意思に基づいて自死行為が行われたかが問題となってきます。
しかし、自死にかかる生命保険問題の裁判例を探している際に、興味深い2つの裁判例を見つけたのでここに紹介します。それらの裁判例では、自死行為そのものが争いになっていました。1つは、仙台地裁の平成21年11月20日の判決です。被保険者がいったん縊頚行為による自死を試みたものの,これを中断した後に縊頚行為の影響で嘔吐し,吐物を吐き出せず窒息死した事案です。この裁判では、この窒息死は「自殺」には該当しないと判示されました。もう1つは、松山地裁今治支部の平成21年4月14日の判決です。これは、被保険者が熱傷を負い、闘士状姿勢(※あたかもボクサーが試合をしているような格好)で仰向けに倒れているところを発見され、最終的に全身熱傷により死亡した事案です。自死か否かが争われましたが、結局、被保険者が「自殺」したと認めるに足りる証拠はないとされました。
実際問題、外形上自死であることに疑念がもたれるような場合は、自死行為そのものを争うという選択肢もあるのかもしれません。
なお、保険に関しては、傷害疾病定額保険契約というものもあります。これは、保険契約のうち、ケガや病気(三大疾病や七大疾病等)によって入院・通院等をした場合に、契約時に定めた一定額が支払われるものです。
この傷害疾病定額保険契約において、負傷し、その結果死亡した場合も、保険金が支払われます。この場合、保険金が支払われるためには、偶然性の要件が必要となってきます。偶然性を巡って、例えば、車ごと海に転落したような事案について、自死か否かが争われることがあります。偶然であることを明らかにするために、保険金請求者(多くは遺族)が自死ではないことを主張立証していくということになります(証明責任の問題も出てくるのですが、細かいのでここでは触れません。)。
・・・ややこしいですね・・・
保険は、興味深い分野だと思うのですが、ややこしいことも多く、遺族の方々も混乱することが多いではと常々思っています。