自殺報道ガイドラインについて

ここ数年、芸能人の自死のニュースを見かける機会が定期的に続いているという感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そして、著名人の自殺が、一般の方(特に、子供や若年、自殺念慮を抱えている人)に対する影響を与えることが統計上明らかとなっています。令和2年の7月に男性俳優が、同年9月に女性俳優が自死した後、統計上、顕著に自殺者数が増えたというデータが存在しており、芸能人の自死が、ワイドショーなどのテレビ報道や、インターネット上の記事を通じて若年層に自死のきっかけを与えている可能性があります。

WHO(世界保健機構)は平成29年に「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識2017年度版」(「自殺報道ガイドライン」と呼ばれています)を定めており、かかるガイドラインよれば、<自殺関連報道として「やるべきでないこと」>として、「報道を過度に繰り返さない」「自殺に用いた手段について明確に表現しない」「センセーショナルな見出しを使わない」などが挙げられています。
他方で、<自殺関連報道として「やるべきこと」>として、「日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること」「自殺と自殺対策についての正しい情報を報道すること」などが挙げられています。

昨年末の芸能人の自死報道を見ても、朝からどのチャンネルでも長時間の特集が組まれ、上記のガイドラインが守られているのか疑わしいようにも思われましたが、ニュースの最後に相談窓口の案内がなされるなど、報道姿勢に変化も感じた番組もありました。

ただし、若年者層は、テレビ等の報道よりもSNSでの情報収集が中心です。報道関係者ではない個人の情報発信に影響を受けてしまう可能性が大いにありますが、個人のSNS発信は規制が難しい状況です。子供達がインターネットリテラシーを学ぶ機会も増えていると聞きますので、自殺報道に接した際の対応の仕方も教える必要があると考えます。