自死により亡くなられた故人が、資産よりも負債が上回っているような場合には、相続人としては相続放棄を検討することとなります。
相談をお伺いしているなかで、被相続人が亡くなったことを知らない関係性の薄い他の同順位の相続人や次順位の相続人に対して、相談者が相続放棄をした事実を伝える必要がありますか、という質問をしばしば受けます。
特に自死遺族の場合には、話の流れ次第で故人が自死で亡くなったことに話が及ぶ可能性があることから、関係性の薄い同順位の相続人や次順位の相続人にその旨伝えることに心理的な抵抗感を覚えることは無理からぬことです。
自身が相続放棄を行うことを同順位の他の相続人や、次順位の相続人に伝えなければならないというような決まりはありません。ですから、様々な事情で心理的な抵抗感がある場合に無理をして告げる必要はないと思います。
他方で、困ったことになるケースもあります。相続放棄は同順位の者(子、父母、祖父母など)が全員行わなければ、次順位の者が相続人となることはありません。
ですので、相続人の内ひとりが、被相続人が死亡した事実を知らないまま時間が経過すると、被相続人の債務の問題や損害賠償の問題などが未解決のまま法律関係が安定しない可能性があります(債権者が迅速に相続関係を調べて現在の相続人に請求してくれるとは限りません)。
たとえば、子が亡くなった場合に、離婚した両親の一方が、子が亡くなった事実を知らない元配偶者にその旨を知らせないと、同じ両親の下に兄弟姉妹がいるような場合には、兄弟姉妹としては先順位の相続人が相続放棄するのか、自分がいつ相続の順番が回ってくるのか想定できず、法的に不安定な状況が継続することになりかねません。
このような場合が典型例ですが、他の同順位の相続人や次順位の相続人に対して、被相続人が亡くなったことおよび自身が相続放棄をすることを伝え、そして伝えた相手が相続放棄を行う場合には知らせてほしいとお願いしておくほうがよいケースもあります。当弁護団にご相談いただけましたら、ご遺族の置かれた状況を踏まえて一緒に考えてアドバイスをさせて頂きます。お気軽にご相談して頂ければと思います。