「不適切指導」について

令和4年12月に生徒指導提要が改訂されました。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm

生徒指導提要とは、小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等について、時代の変化に即して網羅的にまとめ、生徒指導の実践に際し教職員間や学校間で共通理解を図り、組織的・体系的な取組を進めることができるよう、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として作成されたものです(文科省のHPより)。

改訂された生徒指導提要では、いじめや「自殺」について各々1章割かれていることも気になるのですが、私が一番気になっているのは、第3章「チーム学校による生徒指導体制」の中の3.6.2「懲戒と体罰、不適切な指導」です。

懲戒や体罰の内容は以前から比較的明らかでしたが、この改訂された生徒指導提要では、部活動における不適切な指導について論じられています。そして、不適切指導の例として、

  • 大声で怒鳴る、ものを叩く・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する。
  • 児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する。
  • 組織的な対応を全く考慮せず、独断で指導する。
  • 殊更に児童生徒の面前で叱責するなど、児童生徒の尊厳やプライバシーを損なうような指導を行う。
  • 児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する。
  • 他の児童生徒に連帯責任を負わせることで、本人に必要以上の負担感や罪悪感を与える指導を行う。
  • 指導後に教室に一人にする、一人で帰らせる、保護者に連絡しないなど、適切なフォローを行わない。

が挙げられています。

この不適切指導に関しては、生徒指導提要の中で「教職員による不適切な指導等が不登校や自殺のきっかけになる場合もあることから、体罰や不適切な言動等が、部活動を含めた学校生活全体において、いかなる児童生徒に対しても決して許されないことに留意する必要があります」とあります。

実際に私が担当した事案でも、部活に関するものではありませんが、教職員による不適切な指導等が自死のきっかけと思われるものもありました。不適切指導は、学校生活全体で配慮されるべきものでしょう。

ところで、高校生以上の自死の場合、生徒・学生が、いじめ、体罰その他の生徒・学生の責めに帰することができない事由により生じた強い心理的な負担により死亡したときは、スポーツ振興センターから死亡見舞金が給付されることになっています(スポーツ振興センター法施行令3条7号)。

そして、生徒・学生の責めに帰することができない事由の内容については、スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程で、教員による暴言等「不適切な指導」又はハラスメント行為等教育上必要な配慮を欠いた行為を含むものとされています。

生徒指導提要の「不適切指導」とスポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程の「不適切指導」。両者の関係がどのようになるのか、なんらかの形で判断が出されることが望まれます。