高齢者の自死の理由を知りたい

 遠方に住んでいる高齢の親が亡くなった、なぜ亡くなったのか自死の理由を知りたい、というご相談を受けることがあります。

 高齢の方は、すでにご退職をされていて、学校や会社といった組織に属していないことがほとんどのため、自死の理由を特定するのはなかなか難しい場合も多いです。しかし、ご遺族としては、病院のカルテを取得するほか、故人が要介護認定や要支援認定を受けていた場合には、介護保険の認定情報の開示を受けるという選択肢もあります。これは、要介護の認定に際して作成された資料で、介護保険の認定調査票、主治医意見書、審査会議事録、介護認定審査会会議録などを取得することができます。

 資料作成の目的は、要介護の認定のためであり、自死の理由が必ず判明するとはいえませんが、身体機能や精神・行動障害の有無などが記載されており、生前の様子を知る手掛かりになります。

 情報開示の申請は、弁護士に依頼せずとも、ご遺族にて手続きができます。具体的な開示方法は、故人が住んでいた自治体のホームページを参照いただくか、自治体に直接お問い合わせいただければと思います。

ご遺族への警察からの説明

 「警察から十分な説明を受けられなかった」というご相談をご遺族から受けることがあります。

 そもそも、ご遺族は警察から、いつ、どのように説明を受けられるのでしょうか。「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」や令和6年3月1日付通達をもとに説明したいと思います。

※根拠となる「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」や通達については、2023年9月11日の西川翔大弁護士のコラム「遺族が警察から得られる情報について」に詳しい説明がございます。

1 どのような説明が受けられるのか

 警察がご遺族に遺体を引き渡す際には、下記のような「死因その他参考となるべき事項」を説明すべきとされています。

①遺体の発見日時
②調査の実施結果

 ここでの調査の内容としては、遺体の様子や発見場所の調査、関係者に対する発見時の状況の聞き取りなどが想定されています。

③解剖の実施結果

 警察は、解剖前に、ご遺族に解剖の必要性を説明しなければならないとされ、また、解剖後には結果を説明すべきとされます。

 なお、場合によっては、ご遺族の承諾がなくても解剖を実施することができてしまいます(警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律6条2項)。

④死因

 死因とは、犯罪によって亡くなったわけではないと判断した理由とその経緯のことをいいます。

⑤その他参考事項

2 説明の時期

 原則として、遺体の引渡し時です。ご遺族の都合によって引渡し時に説明することが難しい場合には、ご遺族の都合がつき次第すみやかに説明することとされています。

 とはいうものの、遺体の引渡し時には、ご遺族の動揺も大きく、説明を十分に理解することは難しいでしょう。そのため、通達では、遺体の引き渡しから時間が経過してから改めて説明を受けたいと感じるご遺族にも適切に対応できるよう、担当者の連絡先を伝えておくように記載されています。

 また、ご遺族から検査結果の提供を求めた場合には、検査結果を簡潔にとりまとめた書面を交付し、再説明を行うこととされています。

3 説明方法

 原則として口頭となりますが、ご遺族の不安や疑問をできる限り解消することができるように資料を提示するなど、適切な説明に努めることとされています。

 また、2のとおり、警察に要望をすると、書面を交付してもらうことができます。

 警察から連絡があると、突然のことで、ご遺族が動揺されてしまうのは当然のことです。警察もご遺族の心情に配慮すべきとされていますので、落ち着いてから、あらためて警察に説明を求めることも可能なのです。

フリーランスをめぐる法整備

 コロナ禍を経て、フリーランスという働き方が注目されています。いまや、フリーランス人口は1577万人(新・フリーランス実態調査 2021-2022年版 – Speaker Deck)とも言われており、これから益々フリーランス人口が増えていくものと予想されます。

 フリーランスというと、時間や場所を拘束されない、組織に属さずに自由に働くことができる…といったイメージが先行しますが、必ずしも良い側面ばかりとはいえません。報酬未払いや発注者による買い叩きなど、様々なトラブルが発生するリスクがあり、また、法整備が十分になされていないという課題もありました。

 このような中で、2023年4月28日、国会で「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆる「フリーランス新法」)が成立しました。フリーランス新法では、取引条件の明示義務や報酬支払遅延の禁止、義務違反の場合の公的機関への申出などについて定められ、フリーランスをとりまく取引の適正化や就業環境の整備が目指されています。

 また、最近では、厚生労働省が、労災保険の対象を原則としてすべての業種のフリーランスへと拡大する方針を示しています。従来、一部の業種を除き、フリーランスは労災に加入することが出来ませんでした。そのため、フリーランスが労災認定を受けるためには、労働者性を認められなければならず(語弊はありますが、わかりやすくいえば、働き方が雇用と同じと認められることです)、フリーランスと労災認定の間には、常にハードルがありました。フリーランスの労災保険加入が認められれば、フリーランスが自死された場合にとるべき選択肢も増えるものと思われます。

 フリーランスをめぐる法的対応については、ここ数年で大きく変わるのではないでしょうか。