弁護士と依頼者の関係~併走者として~

 東京の多摩地区で弁護士をしております。加藤慶二と申します。

 弁護士の仕事は,法律を駆使して,紛争を解決することだと思います。複雑な法体系の知識を持ち合わせており,それによって,依頼者さんの悩み・紛争を解決しなければなりません。そのため,弁護士として働く以上は,当然,法律を駆使する能力・法律についての知識がなくては話になりません。法律に関する知識がなければ,それは「スキルのない専門職」に他ならず,むしろ依頼者さんに迷惑をかけてしまうことでしょう。

 しかし,反面,弁護士の仕事は法律を駆使すること,法律の知識さえを持っていさえすればよいわけではありません。先のコラムにて,和泉弁護士が指摘していたように,遺族の方には様々な心理的・精神的な不安を感じておられる方が多くいると思います。

 よく遺族の方から,

 「弁護士から,『もう子どもは死んで,戻ってこないのだから,早いところ忘れなさい。いつまでもグズグズしていないで,●●の手続きをしたほうがよい』と言われた」

 「弁護士に会ったとたん,ろくに話も聞かないで,子どもが死亡したことにおける損害賠償の請求額の話に終始した」

 などという声をよく聞きます。

 弁護士は,法律を駆使する能力・法律についての知識が求められるため,法律の知識「さえ」あればよいと考えている人は少なくなく,実際に弁護士の中にもそのように考えている人がいないわけではありません。「依頼者は法律の答を知りたいのであるから,端的に答えをいえばよいのだ」ということでしょう。

 必要な情報を淡々と教えてもらえるほうが,むしろありがたいと思われる方もおりましょうし,そこは相性の問題なのかもしれませんが,少なくとも私は,弁護士は法律の知識「さえ」あればよいのだとは思ってはおりません。

 法律の知識・専門性に特化し,研鑽を積まねばならないことは重々に承知しているつもりですが,依頼者の方が多くの不安等を感じておられる中で,ただただ事務的に法知識にだけ特化していくことは,必ずしも依頼者さんと「併走」することができないと考えています。

 弁護士に頼む上では,相性ということは重要です。依頼者さんと弁護士の間には信頼関係が必要とされるので,「この弁護士であれば,何か信頼できるな」という思いを大事にされることは,とても重要だと思います。