裁判のIT化と自死遺族支援弁護団

これまで、IT化とは程遠いイメージであった裁判実務ですが、ここ数年で急速にIT化が進んでいるということは、2022年12月5日付の川合弁護士のブログ記事でも取り上げたところです。

自死遺族弁護団では従来からSkypeやZoomなどのWEBツールを使用してご相談を伺ってきましたが、昨今の裁判のIT化により自死遺族支援弁護団としての仕事の進め方も変わってきたなという印象です。当弁護団は毎週水曜日にホットラインを設けて全国の弁護士が持ち回りで相談をお受けしておりますが、全国各地からお電話やメールがありますので、どうしてもご遺族と弁護士との間に距離があるということもしばしばあります(筆者は滋賀弁護士会所属ですので、なおさらです)。

これまで裁判期日のために裁判所に出頭する必要があることも多く、ご遺族と弁護士との間に距離がある場合、出頭するための交通費や移動の時間などが問題となり、ご遺族も依頼がしにくいし、弁護士も事件をお請けしにくい場合がありました。しかし、ここ数年でWEB期日が一般化し、双方の代理人が出頭することなくWEB上で期日が行われることも多くなったため、実際に裁判所に出頭する回数は大きく減りました(一度も出頭しないで裁判が終わることもあります。)。

そのためご遺族も弁護士も両者の遠近を意識する必要が少なくなってきましたように感じます。当弁護団では、従来から遠方であっても自死案件に詳しい弁護士が担当することを希望されるご遺族のご依頼を多数頂いておりましたが、さらに距離を気にせずに依頼されるご遺族が増えて行くのではないでしょうか。また、弁護士もご遺族との距離を気にせずに自死遺族支援に関する専門性を発揮しやすくなると思います。

とはいえ、ご遺族と弁護士との信頼関係を構築するためには対面でお話をお伺いすることも必要なことが多いと言えます。また、証拠や証人の都合上、近くの弁護士が対応したほうが良いケースもあります。そのようなケースでは、ご遺族と距離的に近い弁護士と遠い弁護士が弁護団を組んで、距離的に近い弁護士の事務所でご相談をお伺いすることもありますし、お近くに弁護士が居ない場合は弁護士が実際にご自宅に赴いてお話を伺うことも積極的に行っています(当弁護団では必要に応じて出張相談を無料で行っております)。

IT化のメリットと、対面の良さをうまく使い分けて、ご遺族の抱えておられる問題のより良い解決につなげていければと思います。