ご遺族からの話を伺っていると、「一緒に暮らしていたのにどうして気付いてあげられなかったんだろう?」と自分を責める方が少なくありません。
そこには、もし亡くなった家族が生前発していたSOSや精神障害による変化に自分が気付けていたら、大切な人を自死で失うことはなかったかもしれない、という悔いのような想いがあるのかもしれません。
遺族としては当然の想いだと思います。
しかし、そもそも人は日常生活の中で気分が落ち込んだり、体調を崩したりすることがある生き物ですので、たとえ元気が無い様子に気付いたとしても、それが精神障害と結びついて理解されることは稀なことだと思います(病気の影響で仕事のパフォーマンスが低下する可能性があることや、意欲が低下する可能性があることに気づけるだけの知識を持った人は多くはないでしょう。)。
また、精神障害の中には、軽症うつ病エピソードや適応障害のように、周囲の人が気付きにくいものもあります。
例えば、軽症うつ病エピソードであれば、本人が仕事を行うことにいくぶん困難を感じるという程度で、完全に働けなくなるわけではありませんので、周囲の人は気付かないことが多いと思います。また、適応障害であれば、ストレスの原因が仕事にある場合、仕事と関係ない、例えばプライベートな時間はいつもと変わらず元気に過ごせたりしますので、家族が変化を感じ取ることはそもそも難しいのではないかと思います。
この様に、精神障害の症状が出ていたとしても、日常よく見られる心身の変化と区別することが困難な場合が多いうえ、家族だからこそ気付きにくい病気もある以上、「気付いてあげられなかった」ということでご遺族が苦しむ必要はないのです。
私自身は、ご遺族が自分を責めて苦しむということは理不尽なことだと考えています。そのような理不尽で苦しむご遺族が少しでも減って欲しいという願いから、日頃相談を受けていて感じたことを綴ってみました。
誰かの一助になれば幸いです。