フランクルの『夜と霧』

 読んだことで世界観がぐるりと変わった,という本はありませんか。私の場合は『夜と霧 新版』(V.E.フランクル著)です。

 ナチスの強制収容所での体験が綴られているので,重すぎて読み続けられない心境にもなるのですが,読み進めた先にすごい世界が待っていた,という読後感でした。正に,世界がぐるりと変わって見えました。

 近しい人を予期せぬ形で亡くしたら,この本を読み直そうと決めています。実際にその状況になったら,本を手に取ることなどできなくなってしまうのかもしれませんが,何とかして読みたいと思っています。

遺族の方の思いに

1 自死で亡くなられた方について勤務先の会社に損害賠償請求していた件で,賠償を受ける内容で合意することになった時に,ご遺族から伺ったお話。

 賠償を受けることになったとはいえ,亡くなられたご本人が戻って来る訳でもなく,合意により気分を晴らしていただくことにはならないと思うものの,少しは気持ちを軽くしていただけるところがあればと思いながら,ご心境を伺うと,その方はこう仰った。「この合意で,亡くなったことを受け止めなければならないんだなと思う。会社と交渉している間は,まだ完結していないというか,そういう受け止めができていたが,完結したことで,いよいよ,帰ってこないのだということを受け止めないといけない。そのことが,かえって辛い」。

 少しは気持ちを軽くしていただけるところがあればなどとおこがましいことを考えていたことに,頭を垂れるばかりだった。

2 別のご遺族から伺ったお話。

 その方は朗らかな方で,打合せでいつも冗談を仰り,私の方が笑わせていただくのが常だった。

 その方に裁判の尋問に出ていただくことになり,打合せを行った。親族を自死で失うことの心情について裁判官に少しでも理解してもらいたいと思い,辛い事実を思い起こしていただく質問を重ねることを申し訳なく思いながら,「ご親族が自死で亡くなったということについて,どのような受け止めをしてらっしゃいますか」と質問すると,その方は,それまで一度も見たことがない険しい表情をなさりながら,こう仰った。「(自死で亡くなったという事実を)100%そのまま受け止めると,自分が耐えられないところが出てくるので,半分くらいで受け止めている。100%受け止めるというのは無理。半分くらいで受け止めているけれども,辛い。打合せで弁護士と話しながらも,笑っておきたいと思う。泣き出したら止まらなくなると思うので」。

 いつも朗かに,冗談も仰ってくださっていた心の内で,そんな心情を抱えてらっしゃることは想像したこともなく,頭を垂れるばかりだった。

3 自死遺族の方からご依頼いただく事件を担当するようになって20年弱になるが,ご遺族の心情の数パーセントも理解できていない中で担当しているのではないかと,頭を垂れることばかりだ。それでも,少しでもお手伝いできることがあればと思いながら,担当させていただいている。