遺族支援とは何か ④総合支援の誕生

遺族支援という分野が生まれた初期のころは、「遺族支援=心のケア」だと考えられていました。 近しい人を自死で亡くした人は心に大きな傷を抱えます。
これをカウンセリングや投薬によって緩和することが重視された時期もありました。

しかし、自死遺族が抱える問題を丁寧に見ていく過程で、遺族は自死による心の傷だけではなく、経済面、生活面で様々な問題を抱えていることが明らかになってきました。
「夫が急に亡くなってしまい子ども3人を育てていく経済的余裕がない。」、「生命保険を支払って貰えない」、「ネットにプライバシー情報を書き込まれた。」、「学校にいじめの調査を求めたい。」、「アパートの大家さんから損害賠償請求の手紙が届いた。」等々、私たちはさまざまな相談を受けてきました。遺族の中にはこれらのトラブルが次々と発生し、死別の悲しみにひたる時間すら与えられないケースも少なくありませんでした。

どうやら、遺族支援とは心のケアだけでは不十分なのではないか。
心理、医療、法律、宗教などさまざま分野が連携し「総合的」に「支援」することが必要なのではないか。 そのような問題意識が広まる中で、「総合支援」という考え方が生まれてきたように思います。遺族の悩みはその人ごとに多様であり、多様な社会的資源が連携しつつ遺族を支える仕組みを作ることこそが重要である。そのような考え方が徐々に広まっていきました。

そして同時に、遺族支援に関わる弁護士の役割も明確になってきたように思います。詳細は次回以降に書きますが、遺族支援に関わる弁護士の役割は、弁護士がカウンセラーの代役を務めることではありません。弁護士が遺族の心情を理解しつつ、弁護士として質の高い仕事をすることこそが、「総合支援」を支える一角としての弁護士に求められている役割なのだと考えています。