当弁護団には様々な自死にまつわるご相談が寄せられます。その中で、先日ご遺族より、「建物を借りていた子供が賃貸建物にて自死してしまった結果、当該自死により賃貸建物の価値が大幅に下落したとして、賃貸人より下落した価値に相当する損害賠償を請求されている。」とのご相談がありました。
賃貸人からこのような請求をされると、多くの方は、「賃貸人から請求されているので払わなければならないのではないか。」と考えてしまうのではないでしょうか?
しかし、実際には多くの場合、賃貸建物の減価分全額の損害賠償を行う必要はございません。
大阪高裁平成30年6月1日判決は、「結局、本件建物が賃貸を目的とした収益物件であることを考えると、特段の事情のない限り、賃借人の自殺により本件土地建物の減価があるとしても、賃借人の債務不履行と相当因果関係のある損害は、本件建物の内、本件居室の賃料収入に係る逸失利益が発生することに基づく減価というべきである。」と判示しております。
この判例は、賃貸人が賃貸建物を売却しようとしていたことを賃借人が知っていた等の特段の事情がない限り、自死による賃貸建物の価値減価分全額まで賠償する必要はないと判示しています。
このように、裁判例を知らないことにより、本来支払わなくても良い損害賠償を請求され、これを支払ってしまうケースも多くあります。
賃貸人等から何らかの請求をされた場合でも、安易に支払わず、本当に支払わなければならないものなのか、まずはお気軽に当弁護団にご相談ください。