遠方のご遺族からの相談について

 自死遺族支援弁護団は、大切な人を自死で亡くされたご遺族の置かれた状況に配慮しながら、ご遺族が直面する様々な法律問題を総合的に解決することを目的に結成された弁護団です。

 自死が絡む法律問題については、どのように対応するのが良いのかわからない弁護士も多いようで、当弁護団への問い合わせには、近くの法律事務所に相談したが対応を断られたというご遺族からのものも少なくありません。実際に話を聞いた中には、複数の法律問題が絡み合う事案で、そのうちの一部だけを対応し、その他の問題については適切な対応がなされないまま放置されているというケースもありました。

 当弁護団では、上記のような問題を回避し、少しでも多くのご遺族が適切な法的支援を受けられるようにするために、所属弁護士同士が毎月情報を交換し、事案によっては議論を重ねながら、お互いの経験を共有し合うことで、複雑な問題にも適切に対応できるよう研鑽しています。

 そのうえで、一定の研修を経た所属弁護士が、無料法律相談を週替わりで担当しています。担当制ですので、中には、北海道のご遺族の相談対応を、大阪の弁護士が行うということもございます。このような場合に、ご遺族の中には最寄りの弁護士の紹介を希望される方もおられますが、所属弁護士が最寄りの地域にいないということも少なくありません。

 ただ、現在では、ウェブ会議システムなどを利用することで、遠方でも顔を見ながら打合せをすることが容易ですので、弁護士が最寄りの地域にいないということは、それほど大きな障害ではなくなりつつあるといえます。

 また、当弁護団では、電話やウェブ会議システムでの相談や打ち合わせを重ねる中で、現地に直接足を運ぶ必要があると考える場合には、初回に限り、ご遺族に旅費の負担をいただくことなく所属弁護士が面談に伺う対応も行っています。

 そのため、遠方にお住まいで、最寄りの地域に所属弁護士がいないというご遺族の方であっても、まずはお気軽にご相談頂きたいと思います。必要があれば、国内どこにでも会いに行きます。

遺族支援とは何か ⑤ネットワーク型アプローチの重要性 ―弁護士はカウンセラーになれるか?―

前回の投稿(「遺族支援とは何か④総合支援の誕生」)では、心理、医療、法律、宗教などさまざま分野が連携しながら総合支援を行うことの重要性について述べました。

では、そのような総合支援の担い手として、弁護士は何をするべきでしょうか。周りの弁護士を見ていると、大別して2つのアプローチが考えられるように思います。

1つ目は、自己完結型アプローチ。心理学や精神医療を学び、弁護士自身が法的サービス以外のサービスも提供できることを目指します。いわば、弁護士が単独で総合支援を行うアプローチです。

2つ目は、ネットワーク型アプローチ。弁護士はあくまで法的サービスの提供者であるというスタンスを維持しつつ、必要があればカウンセラーや医療関係者につなぐことを目指します。いわば、弁護士が他の社会的資源とタッグを組んで、総合支援を行うアプローチです。

個人的には、以下の理由から2つ目のネットワーク型アプローチの方が正しいと考えています。

まず、弁護士の可処分時間には限界があること。

法廷に出たり日常の業務をこなしながらカウンセラーや医療の役割を果たすだけの時間的余裕が作れない弁護士が大多数だと思います。依頼者からカウンセラー的な役割を求められることも時にはありますが、中途半端な知識で弁護士がカウンセラーや医師の役割を果たそうとするのはむしろ危険ですし、本職の方に失礼だと、個人的には考えています。

加えて、私たちの究極的な目的はネットワークを作りにあること。

日本社会は統計的に見ても自死の多い社会です。遺族支援では、自死のリスクを社会全体で吸収し、個人に過度な負担を負わせない仕組みを作ることが求められています。

社会全体で総合支援を実効的に機能させるには、膨大な数の支援の担い手が必要です。弁護士個人の努力だけでカバーできる範囲には限界があり、他の社会的資源と協力し、ネットワークを構築しなければ、総合支援の実現は到底不可能でしょう。

もっとも、2つ目のネットワーク型アプローチを採用するとして、これをどう実現するか、実践面こそが非常に大切です。単に他の社会的資源の連絡先を知っている程度では、繋いだ先で適切な支援が行われないことが多いように思います。社会的資源相互の信頼関係が重要です。 これについては、次回以降に詳しく述べます。

鉄道事故

 鉄道事故については、当弁護団HP自死遺族が直面する法律問題「鉄道事故」で解説していますが、警察から、故人が鉄道に飛び込んで亡くなったという連絡を受けたご遺族は大変なショックを受けます。

 親族が亡くなっただけでも辛いのに、警察から「鉄道会社に遺族の連絡先を伝えていいですか」とか問い合わせがあり、案件によっては「本人確認のためDNA鑑定をおこなう必要があり、時間がかかる」と言われ、通夜や葬儀がいつできるかわからないという場合もあります。

 故人が1人暮らしをされていたような場合、故人の遺産、預金、借金があるかもよくわからず、また、鉄道会社がいくら損害賠償を請求するかわからないということで、相続したらよいのか、相続放棄したらよいのか決められません。

 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要がありますが、鉄道会社が3か月以内に賠償請求額を明らかにしてくれるかどうかもわかりません。そのため、まずは故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをして、鉄道会社から請求が来るまで待つことをお勧めします。伸長の申立書は、家庭裁判所のホームページに書式や記載例、必要書類などの手続きが掲載されていますし、また、最寄りの家庭裁判所の手続き案内窓口に直接相談されるのも良いと思います。

 鉄道会社から損害賠償の請求が来た場合、弁護団にご相談いただければ、詳しい事情をお聞きした上で、妥当な範囲の請求かどうか弁護団で検討させていただきます。メールや電話での相談は無料ですのでご安心ください。

 最終的に相続放棄する場合、誰が法定相続人となるかについて確認しておかれると良いです。

 法定相続人になる人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族です。血族相続人には相続順位が定められており、相続順位は下記のように定められています。

第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
第2順位:親、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)

 故人に配偶者や子どもがいない場合、両親が法定相続人となり、両親が相続放棄をすると、両祖父母(ご存命の場合)が次の相続人となりますので、両祖父母も相続放棄が必要となります。両祖父母が相続放棄をすると、故人の兄弟姉妹や代襲相続人が次の相続人となりますので、それらの方も相続放棄が必要となります。

 最後に、告知です。

 この弁護団では、毎年3月に24時間相談会を、9月に12時間相談会を実施しています。

 2022年9月10日(土)昼12時から深夜0時までの12時間、自死遺族の方を対象に無料法律電話&LINE相談会を実施予定です。何かお困りごとがあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。

2022年9月10日(土)12時間無料法相談会についての詳細はこちら

故人の足跡を探す

本年6月20日付けの晴披弁護士のコラムにおいても書かれておりましたが、我々弁護士の活動、特に訴訟においては「事実」とその事実を裏付ける「証拠」がとても重要となります。

相談者のお話をお聞きするたびに、「こういう証拠があれば・・・」と思うことがよくあります。自死遺族が故人の自死を予期しているということは稀であり、生前から証拠の収集をすることは不可能です。そのため、他の事件と比較しても証拠の収集が容易でないことが多いです。

このような問題を踏まえ、先日、当弁護団がお世話になっているSEの方を講師にお招きして「PCやサーバー上のデータを有効活用するための講座」を開催いたしました。

その講座において、PC等の中には故人の生前の様子を見て取れる手がかりがたくさん残されていることが分かりました。

例えば、PCのイベントビュアーにはイベントIDが保存されており、使用者がそのPCで行った作業内容や時間が看取することができますし、その他にも故人の行った場所等が分かることもあります。

このような証拠の一つ一つは点に過ぎませんが、それらを繋ぎ合わせて線にしていくと故人の足跡が一定読み取れることもあるのです。

自死遺族にとって、これらの証拠が勝訴に有用なことはもちろんですが、故人の足跡が分かることによって生前の故人のことを知ることが遺族の心を充たすこともあるのだと思います。

膨大な量の証拠を検討し、線にしていく作業はとても困難で、挫けそうになることもありますが、今後も遺族の方と共に立ち向かっていきたいと思います。

労災が認定されたら、給付基礎日額が正しいか要確認です

長時間労働等によって精神障害を発病したため自死したと認められて、労災が認定されると、ご遺族は、遺族補償給付等の給付を受けることになります。

遺族補償給付等の金額は給付基礎日額によって定まります。給付基礎日額は労災発生日からさかのぼって3か月の賃金に基づいて定まりますが、現実に既に支払われている賃金だけではなく、実際に支払われていない未払いの残業代金なども含むと解されています。

厚生労働省は、労働基準監督署に対して何度も、「給付基礎日額を算定する時は、未払いの賃金もきちんと計算しなさいよ」と通達しています。それでもなお、労働基準監督署が未払いの残業代を真面目に算定した上で、給付基礎日額を決定する事例は少ないのが現状です。おそらく計算が非常に面倒くさいからだと思います。

給付基礎日額の誤りは、審査請求をすることや、給付基礎日額の決定が無効であると主張して職権取消しを求めること等によって、是正できる場合があります。

ですから労災認定がされた場合は、給付基礎日額の計算が未払いの残業代、休日手当等も考慮して算出されているかは、必ず確認しましょう。

難しくて分からないという時はお気軽に当弁護団にご相談下さい。

9/10(土)12時間無料法相談会を行います。

 自死遺族支援弁護団では、昨年度に引き続き、2022(令和4)年9月10日(土)昼12時から深夜0時までの12時間にわたり、自死遺族の方々を対象に、電話とLINEによる無料法律相談を実施します。

 自死遺族の方々は、取り巻く環境や心理的な問題などにより、なかなか相談できないという状況の中にいます。
そこで、自死遺族支援弁護団では、12時間いつでも相談に応じることで、自死遺族の方々に「安心して」「昼でも夜でも」「12時間相談したくなったら電話でもLINEでも相談できる」と考えております。
今回の無料法律相談においては、自死遺族支援弁護団に所属する弁護士約10名が12時間電話とLINEで相談に応じることになっております。

 できるだけ多くの自死遺族の方々にご利用いただき、自死遺族の方々が背負っている問題を整理し解決していきたいと考えております。どうぞお気軽にご相談くださいませ。

日時
2022年9月10日(土)昼12:00~深夜0:00

<ラインID
@540ifphl

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詳細

スポーツ振興センターと死体検案書

こんにちは、弁護士の細川です。

児童・生徒の自死事件の場合、スポーツ振興センターから死亡見舞金が支払われる場合があります。

どのような場合に支払われるかは、自死遺族支援弁護団のHPをご覧になっていただければと思います。

⇒自死遺族が直面する法律問題 -学校でのいじめ-

今回は、死亡見舞金の請求を行う手続きで、いつも困惑することについて述べたいと思います。

死亡見舞金の請求は、基本的に、学校の設置者(自治体や学校法人等)が行います。保護者も行うことができますが、その場合でも学校の設置者を経由して請求することになっています。

私の経験ですと、お願いすれば、学校の設置者が請求の手続きをしてくれることがほとんどです(まれに、してくれない設置者もありますが・・・)。

死亡見舞金の請求の際には、死亡見舞金請求書、死亡報告書、死亡診断書又は死体検案書、災害報告書等を提出することになっています。

ここで1つ問題が発生します。

死亡診断書又は死体検案書に関しては、コピーは不可で、必ず原本が必要とされているのです。

しかし、死亡診断書又は死体検案書の原本は、市役所・町役場に提出してしまうので、遺族の手元にはコピーしか残っていません。

では、どうするのか?

スポーツ振興センターと直接やり取りを行うのは学校の設置者なので、その間で実際にどのようなやり取りが行われているのかはよくわからないのですが、以下のような処理を行ったことがあります。

①コピーに、死体検案書を作成した医師から「原本と相違ない」というサインをもらう。

②謄本を発行してもらう。

②は東京都監察医務院ではできるようですが、他のところでもできるのかはわかりません。

いずれにせよ、死体検案書の原本が手元にないことは明らかですし、また、死亡見舞金の請求をする際は常に原本性が問題となっていると思われますので、原本が必要だという運用を改めるべきだと思うのですが・・・

自死事件を担当してみて感じたこと

大阪で弁護士をしております、別所 大樹と申します。

自死遺族支援弁護団に加入して数年が立ち、実際に自死事件を担当させていただいております。

事件処理をしていく中で特に感じたことは、ご遺族に代わってメールやLINE等の内容を把握し、なぜ自死をするに至ってしまったのか、その全貌を究明していくことの重要性です。

労災請求は、遺族として労災補償年金等を請求していくものではありますが、実際に請求するに当たっては、お仕事上のメールや上司等のLINEの履歴等を確認し、どのような心理的負荷を感じる出来事があったのかを確認していきます。

この作業を自死された方のご遺族がご自身で行うには負担が大きすぎるものの、代理人として代わりに確認をし、心理的負荷を感じる出来事を抽出してご遺族にご報告することで、ご遺族はなぜ故人が自死してしまったのか、その一端を知ることができます。

労災請求は、ご遺族だけでは行うことができない事件の全貌を究明していくためにも非常に重要です。

自死に関するお悩みをお持ちの方は、ご遠慮なく当弁護団までご連絡ください。

事実に始まり、事実に終わる

 弁護団では、生命保険・労働・賃貸・医療など、自死遺族の方が直面する様々な分野の相談を受け付けています。
 僕たち弁護士は、相談者の方から、どのような事実があったのかをうかがい、その事実を前提として、必要な手続や見通しについて、法律論・裁判例・経験等を踏まえた法的アドバイスをすることになります。

 それと並行して弁護士が次に考えるのは、相談者の方が言葉としてお話になった事実を、証拠をもって裏付けることができるかどうかということです。

 それは、最終的な紛争解決手段である裁判(訴訟)が、事実に法律を適用して結論を得る手続であり、裁判所に事実を適切に認定してもらうためは、証拠による裏付けが必要不可欠になるからです。

 どこかで聞いた気もしますが、真実はいつも一つ。でも、常に真実が解明されるとは限りません。「こういう証拠があれば事実が明らかになったのに…」と思うことは山ほどあります。

 また、事実を裏付ける証拠は、時間の経過とともに失われていくことが多く「もっと早く相談してもらえたら…」と思うこともよくあります。

 そういえば、先日開催された弁護団の勉強会でも、事実を裏付ける証拠をどうやって集めるべきか、意見交換していました。いくら理屈を勉強しても経験を蓄積しても「事実の壁」が立ちはだかりますが、臆することなく立ち向かっていきたいと思います。

通院歴がない場合の発病の立証

 厚生労働省が2021年10月26日に発表した「過労死等防止白書」によると、2012~2017年度に労災認定された自死のおよそ半数が、精神障害の発症から6日以内に起きていることが明らかになりました。

 過労死等防止白書の概要(上記報告は13頁に記載)

 2012年~2017年度に業務上のストレスによる精神障害で労災認定された過労自殺は497件でした。そのうち、約半数の235人がうつ病などの発症から6日以内に亡くなり、発症から7~29日は93人、30~89日は75人、360日以上は46人でした。

 また、亡くなる前に医療期間への「受診歴なし」が318件(64.0%)であり、半分以上の方が医療機関への通院がなかったことも明らかになっています。

 労災の要件として、うつ病や適応障害などの労災の対象となる精神障害を発病していることが一つの要件とされています。

 ご遺族からの相談をお聞きする中でも、亡くなる前に医療機関への受診歴がない方が多くおられます。また、過労死等防止白書の報告のように、精神障害発症から6日以内に自死に至るようなケースでは、医療機関への受診等を経ずに自死に至るケースがほとんどです。

 しかし、医療機関への受診歴がない場合でも、うつ病や適応障害などの精神障害の発病があったことを示す「本人の様子の変化」を基礎づけることができれば、発病していることも認められる可能性があります(実際に、上記のとおり通院歴のない半数以上のケースで、発病が認められて労災認定されています。)

 発病が認められるためには、同居の家族、職場の関係者、友人等から聴き取り、SNS(LINE、Twitterなど)でのやりとりの記録、インターネットの検索履歴等で、発病を基礎づける事実を証明することが必要となります。

 例えば、もともと明るく活発な性格の方が暗く沈んだ表情をするようになったり、仕事や将来に対して愚痴を多くこぼし転職を検討するようになった場合、もともと穏やかな性格の方が怒りっぽく神経質になる場合、インターネットで「うつ病」、「心療内科」や「自死」、「自死の方法」などについて検索している場合などが発病を基礎づける事実の例として挙げられます。また、精神科・心療内科以外の病院に通院している場合もメンタルの不調が影響して身体の不調が生じている可能性もあります。

 このように、医療機関への通院歴がない場合でも、本人の様子の変化を詳細に証明していくことで発病が認められる可能性が高くなります。弁護団にご相談いただければ、そのような事実もご一緒に確認させていただきます。

>>過労自殺(自死)について