ネットいじめ問題

 はじめまして、弁護士の田中健太郎と申します。

 インターネット問題やマンション問題に取り組む中で、自死に関する案件を取り扱うようになり、自死遺族弁護団に加入することとなりました。

 文部科学省が2020年に調査した不登校等調査によれば、児童・生徒の自死や不登校の原因について、ネットいじめが1万8870件と過去最多となりました。

 世界的にもネットいじめ問題は深刻さを増しており、韓国ではアイドルがプライバシーの拡散を受けたり、誹謗中傷を受けたりすることで自死するというケースが跡を絶ちません。

 日本が行っているネットいじめ対策としては、プロバイダー責任制限法の改正に伴い発信者の特定に要する期間の短縮が図られたことや侮辱罪の刑罰に新たに1年以下の懲役・禁固又は30万円以下の罰金を加えたこと等が挙げられますが、教育現場でのネットいじめの対応はなおざりであると言わざるを得ません。

 私が執務を行う町田市でも小学6年生がネットいじめにより自死したとの報道があります。いじめに使用された端末は、文部科学省肝いりのGIGAスクール構想(児童・生徒の1人1台パソコン端末を配布して教育現場に活用する構想)で配布された学習用デジタル端末を用いたもののようで、デジタル端末の技術的な側面を偏重した教育の結果ともいえます。

 インターネットの問題が伴う自死に関して悩まれている方は、ご遠慮なく弁護団にまでご連絡下さい。

児童・思春期の自死と精神障害について

弁護士の井上です。

最近、相談数の増加とも相まって、児童・思春期の子どもの自死と精神障害の関係について考えることが多くなりました。

例えば、子どもの自死が起こった場合、学校でいじめがあったのではないか、など分かり易い事象にフォーカスして調査が行われ、その結果、いじめはなかった、あるいは、いじめはあったが軽微なものであったという場合に、自死との因果関係は認められない、という調査報告と共に、自死の真相はわからないままとなってしまうことも少なくないと思います。また、その際、自死との間に精神障害が介在している可能性についてしっかりと検討されることは少ないのではないでしょうか。

しかしながら、今日では、医学的知見の蓄積により、自死には精神障害の影響が深くかかわっていること、子どもも大人と同じように精神障害を発症する場合があること[※1]、については広く知られていますので、私は、自死の原因の一つとしていじめが想定されるケースであろうとなかろうと、子どもの自死事件については、精神障害の発症が介在している可能性を否定すべきではないと考えています。すなわち、子どもの自死が生じた場合、常に「精神的負荷の蓄積→精神障害の発症→精神障害の影響による死にたいという願望→自死」という因果の流れを念頭において調査・検討が行われるべきであるということです。

そのようなアプローチで調査・検討がなされる機会が多くなれば、「精神障害の影響による死」、すなわち「病死」であったという「真実」に辿り着けるご遺族も増えるのではないでしょうか。もちろん、精神障害の原因は多岐にわたりますので、原因の調査にもおのずと限界はあります。それでも、「我が子の自死の原因が全く分からない」という状況から解放されるご遺族が増えることを願ってやみません。

また、「精神障害の発症→精神障害の影響による死にたいという願望→自死」という因果の流れを考えることは、亡くなった子供が苛烈ないじめに遭っていたというケースにおいても重要であることは言うまでもありません。精神障害の発症が介在した自死と認定されることが増えれば、自死は「基本的には行為者が自らの意思で選択した行為である」とする非科学的な判決[※2]によって傷付けられるご遺族は少なくなると思います。

なお、児童・思春期の精神障害については、2019年5月に発表された「国際疾病分類第11版」(ICD-11)において、これまで成人期における臨床的特徴が周知されている障害が児童思春期に生じた場合にはどのような臨床的特徴を呈するか、という観点に配慮した記載がなされることとなりました。例えば、大人の場合の「抑うつ気分」が、児童思春期の場合は、身体愁訴、分離不安の高まり、イライラなどとして表れることが明記されることとなり[※3]、従来よりも児童思春期における精神障害の診断がしやすくなることが期待されます。


※1神庭重信編(2020)。「講座精神疾患の臨床1 気分症群」中山書店。

※2一例として、大阪高判令和2年2月27日。

※3「精神医学」(2019)第61巻第3号

子供の自死とスポーツ振興センターの災害共済給付制度について思うこと

こんにちは、弁護士の細川です。

2021年2月15日、文部科学省の子どもの自殺に関するウェブ会議で、以下のような報告がありました。2020年の児童生徒の自殺者数は479人で、小中高校生のいずれも2019年より増え、特に女子高校生は138人と倍増したとのことです。

小中高生の自死者数の分析も重要ですが、自死の背景についても分析を行い、その上で必要な対策を講じていくべきでしょう。

私も子どもの自死事件を担当することがあります。

子どもの自死に関する法的問題は多々ありますが、ここではスポーツ振興センターに関する問題について、少し述べたいと思います。

スポーツ振興センターは、その正式名称を独立行政法人日本スポーツ振興センターといいます。

子供の自死事件において、スポーツ振興センターは、災害共済給付金(死亡見舞金)の支給ということで関与してきます、

児童生徒が学校の管理下で起きた事故により死亡した場合、保護者に対して死亡見舞金が支給される可能性が高いです。自死の事案では、例えば、学校の管理下でいじめがあった場合は、いじめによって自死があったとされれば、亡くなった場所がどこであろうとも、死亡見舞金が給付される仕組みになっています。

スポーツ振興センターの災害共済給付金の1つ目の問題点は、時効が2年である点です。この2年というのは、給付事由が生じた日、すなわち、自死があった日からカウントされることになります。しかし、2年というのはあまりに短いと思われます。例えば、保護者(遺族)が学校の設置者と第三者委員会の設置を巡って交渉していたような場合、1年くらいはすぐに過ぎてしまいます。また、学校や設置者が、保護者に対して、積極的に災害共済給付金制度について教示することは多くないです。かかる状況の下、2年が過ぎてしまったため、結局泣き寝入りという保護者がいるかもしれません。

2つ目の問題点は、児童・生徒の自死の場合、災害共済給付金の支給について、小学生・中学生と高校生では要件が異なる点です。小中学生では、学校の管理下という要件さえ満たせば支給されますが、高校生の場合は、いじめ、体罰その他の当該生徒又は学生の責めに帰することができない事由により生じた強い心理的な負担により死亡した場合に支給されると規定されており、小中学生より支給されにくくなっています(これでも、以前よりは支給されやすくなりました。)。自死は「追い詰められた上での死」なのですから、小中学生と高校生で差をつけるのは、理不尽だとしかいいようがありません。

他にも、保護者が災害共済給付金支給の手続きを行う際は学校の設置者を経なければならないとされていところ、学校の設置者を経るとすることで請求しにくくなるのではないかとか、登下校中の死亡の場合は半額が死亡見舞金の半額が支給されるところ、登下校中に自死が行われた場合は半額をまず支給すべきではないか等、他にも諸々問題がありますが、ここら辺でやめておきます。

自死問題は、お金の問題ではありません。特に子どもの自死の場合はそうです。しかし、自死未遂で重大な障害が残ったケースや、死亡したこと自体に出費がかかる場合もあるでしょう。さらに、きちんと災害共済給付の申請を行うことで、スポーツ振興センター対して、適切な学校安全にかかる調査・研究を促すという効果もありえます。

スポーツ振興センターに対しては、上記のような諸々の問題点の改善を望みつつ、保護者側でも、積極的な災害共済給付金の申請を行っていくべきだと筆者は考えます。